【50代、60代の転職】はじめての介護職 見守りの8つの視点

50代,60代にはなつかしい昭和の飼い犬(屋外) 介護職の仕事
50代,60代にはなつかしい昭和の飼い犬(屋外)

50代、60代で定年退職や早期退職などで、介護業界に転職を検討される方も多いと思います。
私も同じ経験をしていますので、私の経験談が参考になればと思い記します。

新人で介護現場に配属になると「見守りをお願いします」とよく言われます。
見守りの役割とは、事故を防止するということに尽きます。

この記事では見守りの8つの視点について解説します。

高齢者の見守り

「実務者研修」資格取得を推奨します

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できます。
有料老人ホーム、特養、老健、デイサービスの介護職は、無資格でも就業できます。

が、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めします。
「実務者研修」を修了すれば、未経験でもある程度の仕事はこなせます。

介護研修1

管理職になるにも、現場を知っているほうが有利な側面が多々あります。
「実務者研修」で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
転職による環境変化で多少なりともストレスが加わります。

そのうえ、はじめての仕事ではわからないことだらけです。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
介護の仕事の資格はいくつかありますが、お勧めの資格は「実務者研修」です。

「実務者研修」を修了して実務経験があれば、職を失うことは無いと思われます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思います。

導入研修修了、資格取得後もそこがゴールではないので、介護に関する勉強は継続してください。

見守りは介護のキホン

介護における見守りとは、どのようなことでしょうか。
新人で介護現場に配属になると「見守りをお願いします」とよく言われます。


50代、60代で未経験で介護業界に転職されて「見守り」といわれてもピンとこないかもしれません。
見守りがうまくできれば、その後の介護がスムーズになります。

高齢者の見守り

先輩職員は、それぞれの職員の見守りレベルを評価しています。
軽視しがちな業務ですが、できる人とできない人の差は歴然とあります。

介護施設における見守りは事故防止

たとえば、施設の食事スペース(リビング)に何人かが過ごしておられます。
先輩職員はこの時間に他の仕事を済ませておきたい、という場合があります。

それは、汚れた居室の掃除や入浴準備などです。
先輩職員から「見守りをお願いします」と言われるいわれるケースがあります。

見守りの役割とは、事故を防止することです。

転倒事故

見守っていないとどういう事故が起こるか?

  • 足元のふらつきなどによる転倒
  • 入所者同士のトラブル(いわゆる喧嘩)
  • 認知症の方が興奮されて不穏になる
  • 認知症の方が食物でないものを食べる(異食:いしょく)
  • 薬に関する事故
  • 人のものを盗って食べる(盗食:とうしょく)
  • 物を壊わす(破壊行為)

などがあります。
※不穏(ふおん):利用者が落ち着きがなく、興奮状態になったり、不安定になる状態。

こういう事故を未然に防止することが見守りの最大の目的です。
利用者の個性とメンバー構成によって全く異なります。

その現場ではどういうことが起こる可能性があるのか?
まず先輩職員に注意点を聞きましょう。

対処方法を聞かずに見守っていても事故の未然防止は困難です。
いざ何かが起こりそうなときに適切な対応ができるよう心がけましょう。

ここでは事故防止対策の一例を記しました。
実際には、現場ごとにメンバー構成、施設や設備などが異なります。

同様のケースに必ずしも適用できるものではありません。
見守り(事故防止)は現場ごとに異なりますので、ご承知おきください。

見守りの8つの視点

足元のふらつきなどによる転倒の予防

たとえば、トイレに行くために立ち上がろうとされる方がいます。
この場合、その方の身体能力や性格に応じて、いくつかの対応パターンがあります。

  • 転倒リスクが高いので車いすを用意する、
  • 歩行器を用意する、
  • 手引き歩行で一緒に行く、
  • 杖を忘れないよう声掛けをする、
  • 手を出さずに同行して歩行を見守る、
  • 転倒リスクが低いので同行の必要もない、など、


歩行介助

個別に対応が違います。
対応方法がケアプランに書かれているので、ケアプランに基づいたケアを提供しなければなりません。

何も教わらずに見守りはできませんので、しっかりと情報を収集してください。

入所者同士のトラブル(喧嘩)の予防

入居者同士のトラブルもよくあることです。
認知症が原因であったり、もともとの性格の不一致があったり、原因はさまざまです。


怒って暴れる高齢者
高齢者が突然激高されることは珍しいことではありません。
高齢期では様々な要因で怒りやすく(「易怒性:いどせい」と言います)なる方は非常に多いです。

感情をコントロールする機能が衰えている場合は、どんどんエスカレートします。
放置すると暴力行為に発展します。

こういうケースは突発的なことは少なく、よく怒る人はよく怒ります。
特定の人物間、もしくは特定の人物にまつわるトラブルが起こり易いといえます。

対処方法は担当チームで共有されています。
トラブルを起こす人がいないか、事前に確認してください。

トラブルになりそうな人は、事前に席を離すなどの対策がなされています。
それでも自ら近づいてトラブルをつくり出す方もいます。

大声で怒鳴り合うなどの状態になる前に、二人を引き離すことが肝要です。
高齢者は興奮すると自制が効かなくなります。

お互いを手が届かない場所に移動することが無難です。

認知症の方が興奮されて不穏になることを防ぐ

認知症の方が興奮され、大声で叫ばれることもあります。
なにもきっかけがなくても突然スイッチが入るように「ころされるー」などと叫び出す方もあります。

近づいて目線の高さを合わせて、目を見て手を握ってみましょう。
「どうかしましたか?」と聞いてみることで少し興奮が収まることが多いと思います。

傾聴する介護士2

尊厳をもって相手に接することがキーになります。

ただ、すべての方に当てはまる「方程式のようなパターン」は介護の現場にはありません。

普段かかわりのない方の興奮を100%鎮めることは、どんなベテラン介護士でも無理です。
このような不穏状態は伝染します。

個人の不穏につられて、他にも興奮する方が出てきます。
すると全体が動揺しはじめ、何らかの事故が起こりかねない状況に発展します。

これも個別に対応方法があるので、先輩職員に聞いてその通りにやってみてください。
同じ声掛けでも落ち着かれる方と興奮される方があります。

A職員が言えば落ち着かれるが、同じワードでもB職員が言うと興奮されるというケースもあります。
自分のキャラクターに合わせて、オリジナルの工夫が必要かもしれません。

ケースバイケースになりますが、試行錯誤で経験を積み重ねることが大切です。

異食(いしょく)の予防

異食は注意や説得では予防できません。
異食の予防は「食べ物以外は置かない」という対処が一般的です。

異食2

異食癖のある方はだいたい特定の方です。
ときどき、何の装飾物もないとても殺風景な介護現場があります。

異食癖のある方がいらっしゃるとどうしてもそうなります。
手の届く範囲に、ティッシュや花など、食物以外は置かないようにしましょう。

薬に関する事故の予防

目の前に薬が置かれていると「あ、薬がある」と思って飲む方もあります。
それが他人の薬であっても、そういうことに意識は回りません。

薬を飲む女性高齢者

薬はそれぞれの人の病状に合わせて出されています。
間違って飲むと生命にかかわる場合もあります。

介護施設では個人ごとに飲むタイミングごとに薬が一包化されています。
一般的な注意事項(薬に関する事故の主な原因)は以下の通りです。

  • 薬を高齢者の手の届く範囲に放置しない
  • 他人の薬を間違って渡さない
  • 飲み込むまで確認する

一包化された薬(氏名入り)

薬は個人ごとに配薬(はいやく:薬を配る)します。
配薬と同時に、その方に目の前で飲んでいただきます。

目の前で飲んでいただく理由は以下のようなケースがあるからです。

  • 嚥下(えんげ;飲み込む動作)の力が弱く飲み込めないめない(口の中に長く留まる)
  • 薬嫌いで水を飲むフリをしてコップ内に吐き出す
  • 認知症で薬を疑っている(「毒が入っている」などの被害妄想症状)
  • 親切心で自分の薬を他人に差し上げる
  • 「後で飲む」と受け取って落としてしまう、無くしてしまう、忘れてしまう

飲み込んだことを確認するまで、薬から目を離さないことが事故の予防につながります

盗食(とうしょく)の予防

目の前に食物があると、反射的に食べる方もあります。
それが他人の食物であっても、そういうことに意識は回りません。

自分のトレイと他人のトレイの境界もわからなくなっています。
自分トレイがあるのに、他人のトレイに手を伸ばして盗食します。

盗食

悪気は無いので、頭ごなしに叱ると反発されて不穏になります。
事前に席を離すなどの対処が必要です。

破壊行為の予防

頻繁ではないにせよ、破壊行為に至る方もおられます。
認知症の方の不穏(ふおん)の予防をしっかりと心がけましょう。


また、壊れやすいものを身の回りに置かないことも予防策の第一歩です。

怒って暴れる高齢者

事故を予測する

ごみが落ちていると、ごみを拾おうとして転倒される、というリスクが予測できます。
ごみが落ちていれば拾って捨てておくことも事故防止になります。

テーブルの上のコップがテーブルの隅に寄っていると、床に落ちるかもしれません。
落ちて床が濡れると滑って転倒される、というリスクが予想できます。
テーブルから落ちそうなものは片づけておきましょう。

疑問を感じた男性介護士なにかひらめいた女性介護士


座っている椅子の横に歩行器を停めてある場合、ブレーキがかかっていますか?
歩行器に手をかけて立ち上がる際に、歩行器が動くと転倒されるます。
歩行器や車いすのブレーキがかかっていることを確認しましょう。

このように全体を注意深く見て事故を予測して予防しておきましょう。

まとめ

介護の経験がない方が入職してきた際に、最初に一人でやってみるのが見守りだと思います。
50代、60代で未経験で介護の仕事に就かれると戸惑われるかもしれません。

「フロアの見守りをお願いします」と言われることも多いと思います。
「なんだ、見ているだけでいいのか?」そうではありません。

「何をしたらいいのかわからない」と思われるかもしれません。
見守りの役割は「事故を予測して予防」、この一言に尽きます。

見守りとはたくさんの要素が詰まった介護の基本でもあります。
見守りの様子だけでも感じるところはあります。

高齢者の見守り

どの程度の責任感をもって業務に就いておられるか、先輩職員から見れば一目瞭然です。
一人前の介護士としてひとり立ちできる時期が早そうか遅そうか、などなど。

簡単そうに見えて簡単ではありません。
気を引き締めて「事故を予測して予防」していいただきたいと思います。

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