【50代、60代の転職】管理職経験を活かして施設長に応募する

50代,60代が時代の変化を感じた夜のスカイツリー これまでの経験が活かせる
50代,60代が時代の変化を感じた夜のスカイツリー

50代、60代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職しを検討されている方も多いと思います。
私は大手メーカーを希望退職し、複数の法人で、のべ十数年間、大型施設の責任者を経験しました。

介護業界には生え抜きの方も多く、転職組は門外漢でもあります。
他業種からの転身でも、管理監督職経験があれば、その経験は生かせます。


介護施設の施設長と他業種の管理職は、必要なスキルで共通する面があります。
とくに部下の管理に関する知識やスキルは、そのまま活かすことができます。



管理監督職経験の活かし方

50代、60代で管理監督職経験がある方、自分の強みで求心力を高めることができます。
たとえば、労務関連の法律は案外、周知徹底されていないのが介護の現場です。

労働基準監督署   

法律で決まっていることを知らずに、現場の都合で変えてしまっている場合もあります。
実際に現場のリーダーや主任から相談を受けた事例をQ&A形式で記します。

具体的に相談を受けた事例(Q&A形式)

スタッフが相談に来るときは、相手は切羽詰まっていることも多々あります。
50代、60代で介護業界に転職された場合、スタッフの信頼を得るチャンスでもあります。

自分の正確な知識はその場で話す。
あいまいな場合は調べて回答する。

基本に忠実に、一つずつ丁寧に対応していきます。

有休を取得させる義務

Q. 本人が要らないと言っていますが、どうしても有休を取らないとダメですか?

A. 年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
労働基準法に定められた使用者、つまり会社(法人)の義務です。

有給休暇2

有休の日の勤務

Q.「有休を取得したことにして勤務する」と言っていますが、許可してよいですか?

A.許可できません。勤務すると有給休暇は無効となります。
 有休を有効にすると、その日の人員にはカウントできません。

残業の上限は法律で決まっている

Q.残業時間の上限は絶対に守らなければいけませんか?

A.絶対に守らなければなりません。月45時間、年360時間の上限が労働基準法で決まっています。罰則があります。臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。
(初年度の新型コロナ対応は「臨時的な特別な事情」に該当すると判断し、労基署から指摘をされても説明できるように記録を残していました。)

介護疲れ

1か月単位の変形労働時間制

Q.シフト表は先々の分まで作っていいですか?

A.1か月単位の変形労働時間制を採用していますので、1か月ごとに作成しなければなりません。

1年単位の変形労働時間制

Q.1年単位の変形労働時間制を導入しませんか?

A.介護職の離職率は平均14%です。ユニット型で7人の職員がいる場合、平均で1名/年は退職します。また、急な休みもあります。
1日の勤務者の数は法律で決められていますので、シフト変更が必要になります。
1年間のシフトが決めても頻繁にシフト変更が必要になるので労力が増えます。
1年単位の変形労働時間制を導入してもデメリットの方が大きくなります。

シフト変更

Q.シフトの入れ替えはこちらの都合で変更(業務命令で変更)してもいいですか?

A.シフトを決めるときは業務命令で決められますが、決定後の変更は労働者の同意が必要です。

連続勤務日数の上限

Q.連続勤務は何日まで許されますか?

A. 1か月単位の変形労働時間制を採用していますので、連続勤務の上限規定はありません。ただし、安全配慮義務がありますので、一般的な事例を参考にして努力義務として5日くらいに設定してはどうでしょうか。

過労のイラスト(女性)

労働者代表の選任

Q.労働者代表はこちらで指名してよいですか?

A.使用者側が恣意的に決めることは違法です。
正式な文面で告知し、立候補に基づいて選挙もしくは信任投票で決めなければなりません。

無資格者の介護

Q.ドライバーに介護させても良いですか?

A.訪問介護以外なら介護保険法上は問題ありません。
ただし、労働契約書で介護業務が含まれていなければ労働契約法違反になります。

デイ送迎_男性スタッフ

(介護保険制度では介護職員に「処遇改善手当」を支給することになってますので介護職員を特定する必要があり、ドライバーが介護職を兼任する契約は現実的には少ないと思われます。)

研修時間は勤務時間?

Q.研修は勤務時間(時間外勤務含む)ですか?

A.法律で実施することが定められた研修(いわゆる法定研修)への参加は勤務時間です。
法定研修は事業者の義務なので勤務時間に換算されます。
法定研修ではなく自己研鑽目的の研修で自由参加であれば、勤務時間内とする義務はありません。


健康診断は勤務時間?

Q.健康診断は勤務時間(残業)ですか?

A.夜勤をする職員には年2回の「特殊健康診断」の実施が義務付けされています。
特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間です。
その他の職員は年1回の「一般健康診断」実施します。
一般健康診断は「円滑な受診を考えれば受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」(厚労省HPより)とされています。

自主的なサービス残業

Q. 上司の指示ではなく本人が自主的にサービス残業をしています。放置していいですか?

A. (業務命令で)やめさせてください。
使用者側にサービス残業をやめさせる義務があり、使用者側の管理監督責任が問われます。
また、たとえばAさんが2時間サービス残業をしていた場合、8時間勤務のBさんの業務成果と10時間勤務のAさんの業務成果を比較することになり、評価の公平性にも影響します。

時計を見ながら心配している女性介護職

有休を残して退職

Q.本人の合意の下で有給休暇を残して退職するのは良いですか?

A.有給休暇を残して退職すること自体は法的に問題ありません。
ただし、後々に「有給休暇が取れなかった」と申し出られるリスクを抱えることになります。
最近は会社(法人)側がリスクの先送りを嫌う傾向があります。
会社(法人)の方針で有給休暇を残さず取得させるよう指導するケースもあります。

まとめ

50代、60代で転職されて他業種で管理監督職の経験があれば予備知識があります。
少し調べれば回答できると思います。

介護スタッフ_老若男女
介護現場ひとすじでリーダーや主任に就任している人が多いので、法的な面はサポートが必要です。
「誰でも知っている」、「調べればわかる」などと言わずに、親切な説明が求心力になります。

そのうえで、リーダーや主任の専門分野での見識は尊重してください。
そうすれば組織はまとまりますので、組織の長としての職務をまっとうできます。

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