50代、60代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職しを検討されている方も多いと思います。
私は大手メーカーを早期退職し、複数の法人で、のべ十数年間、大型施設の責任者を経験しました。
介護業界には生え抜きの方も多く、転職組は門外漢でもあります。
他業種からの転身でも、品質管理経験があれば、その経験は生かせます。
品質管理の基本は「正確な仕事をするチームを創る」ことにあります。
介護現場は個々の技量に依存しています。
その技量のエッセンスを標準化します。
そしてだれでも最低限のレベルの仕事ができるようにします。
すると顧客満足度は向上し、介護事故は減少します。
品質管理は介護現場のリスクマネジメントに直結する
介護サービスに事故はつきものです。
介護事故が起これば、安心安全への脅威、賠償問題、利用者本人や家族との信頼関係、地域の信頼、時間的損失、行政報告、緊急監査、改善報告など、マイナス作用は計り知れません。
しかしながら、事故隠しは厳禁です。
行政に内部通報されると、責任者個人の責任も問われます。
50代、60代になって個人責任を問われるようなリスクは負えません。
介護施設ではリスクマネジメント(危機管理)に取り組んでいます。
リスクマネジメント委員会を定期的に開催しています。
もし取り組んでいなければ、その取り組みからはじめてください。
リスクマネジメント委員会に出席すれば、品質管理経験の活かし方が見えてきます。
経験を活かして提言、指導してください。
ヒヤリハットを減らす
事故防止のためにはヒヤリハットを減らします。
なぜヒヤリハットを減らすのか。
300件のヒヤリハットを無くしたら、大事故が1件防げます。
ハインリッヒの法則※(1:29:300の法則)を説明すると出席者も納得します。
また、介護事故はゼロにはできない、というのは事実ではあります。
介護事故を減らす努力をする、という方針をアピールしてください。
※ ハインリッヒの法則
1 件の大きな災害・事故の裏には、29 件の軽微な災害・事故、300 件のヒヤリ・ハットがあるとされています。(1:29:300の法則)
隠れている原因を究明する
事故の原因:不注意でした。
事故の対策:これから注意します。
このような事例が少なくありません。
こういう事例は必ず再発します。
再発時も全く同じ原因、対策になります。
これでは同じ事故が繰り返し発生するのも当たり前です。
その裏にある原因を見過ごしているのです。
- 新人だからミスをした、
- ベテランはそういうミスをしない、
- これからは新人に担当させない、
などの対策も現実にあります。
が、このような対策では現場にムリが生じて結局は再発します。
- マニュアルがない、
- 指導していない、
- もともと注意が必要とは知らなかった、
などの背景が隠れているケースが大半です。
介護現場では感覚的な判断に傾きがちです。
品質管理経験を介護事故が減る取り組みに活かしてください。
対策のひな型を提示する
対策の実施も、暫定的な対策のみ実施する傾向もあります。
いつのまにか暫定対策をやらなくなって再発する、というケースも頻発します。
かならず、暫定対策と恒久対策を意識します。
1つの問題に対する対策は2つ以上、複数の対策を実施します。
対策のひな形(例):
- 作業方法を見直す、
- 最適な作業手順を決める、
- リーダーから全員に作業指導を行う、
- マニュアルを整備する、
- マニュアルを回覧する、
- 簡易マニュアルを掲示する、
このように、事故発生のたびに活用できるような「対策のひな形」を提示します。
ひな型に落とし込む習慣ができれば、事故発生件数の低減につながります。
品質管理技法の応用例
フールプルーフの事例
誤薬(薬を間違って違う人に提供してしまう)という事故はあってはならないのです。
が、実際にはよく起こる事故です。
薬袋に記載された名前を読み上げる(呼ぶ)だけでも大きな効果があります。
「Aさん、お薬です」と呼ぶことで自分自身も「あ、この人はBさんだ」と気づきます。
また、呼ばれた側も「わたしはBですよ」と言ってくれます。
手軽なのでルール化して習慣にしてしまいましょう。
これでフールプルーフ対策となって誤薬事故は激減します。
フェイルセーフの事例
転倒を繰り返す利用者の居室にクッションマットを敷きます。
万一転倒があっても重症や骨折が防止できます。
クッションマットはホームセンターなどで手軽に手に入ります。
ご家族に依頼して必要な面積分を持て来てただくようにします。
これもフェールセーフ対策となって転倒による骨折のリスクは大きく低減します。
まとめ
他業種で品質管理の経験があれば基礎知識があります。
事例を知れば、応用が可能だと思います。
介護の現場では、介護ひとすじでリーダーや主任に就任している人が多くいます。
介護に関しては経験が豊富で技量も優れています。
ただ、これまで経験してきた道が違います。
チームで共有できる再発の防止策の策定は、フォローが必要なケースが散見されます。
他職種で品質管理を担当していた方も豊富な経験と技量があります。
介護施設のリスクマネジメント委員会に出席すると自分なりの意見が出てきます。
まずは現場の意見、専門分野での見識を尊重します。
そのうえで自分の意見を親切丁寧に説明すると求心力につながります。
そうすれば組織はまとまり、組織の長としての職務をまっとうできます。
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