50代、60代で定年退職や早期退職などで、介護業界に転職を検討される方も多いと思います。
私も同じ経験をしていますので、私の経験談が参考になればと思い記します。
中には「認知症の方とかかわったことが無い」という方もおられます。
この記事では認知症ケア(3つのポイント)について記します。
「実務者研修」資格取得を推奨します
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できます。
有料老人ホーム、特養、老健、デイサービスの介護職は、無資格でも就業できます。
が、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めします。
「実務者研修」を修了すれば、未経験でもある程度の仕事はこなせます。
管理職になるにも、現場を知っているほうが有利な側面が多々あります。
「実務者研修」で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
転職による環境変化で多少なりともストレスが加わります。
そのうえ、はじめての仕事ではわからないことだらけです。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
介護の仕事の資格はいくつかありますが、お勧めの資格は「実務者研修」です。
「実務者研修」を修了して実務経験があれば、職を失うことは無いと思われます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思います。
導入研修修了、資格取得後もそこがゴールではないので、介護に関する勉強は継続してください。
認知症ケアの準備
認知症に関する基本知識を有し、入所者の尊厳を重んじた基本的な介護方法について把握します。
入所者個々について事前に理解していることが重要です。
- 日常生活動作(ADL)
日常生活を送るために最低限必要な動作を指します。
「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。
一人でベッドから立ち上がれるか?
転倒リスクが大きいか小さいか?
トイレに一人で行けるか?…などを個別に把握します。 - 手段的日常生活動作(IADL)
少し複雑な日常生活動作のことを指します。
「掃除・料理・洗濯・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味」に関することです。
施設に入所されている場合は、他の方とのコミュニケーションはとれているか?
次回の受診日を覚えているか?…などの情報になります。 - 認知症の中核症状
脳の働きが低下することによって直接的に起こる症状を指します。
「記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認」などのことです。
認知症の中核症状の治療方法はまだ確立されていません。 - 認知症の周辺症状(BPSD)
周辺症状には幻覚、妄想(物取られ妄想が典型的)、抑うつ、意欲低下などの精神症状と徘徊、興奮などの行動異常があり、最近ではBPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれるようになっています。
認知症の周辺症状は、周囲のかかわり方や環境次第で不都合を軽減できるとされています。
認知症ケア3つの視点
認知症ケアでは、認知症高齢者の心を理解しようと努力します。
入所者の状態を観察、分析し、適切なケアの方法を選択します。
自尊心を尊重する
認知症の周辺症状や事実の取り違え等は頻繁にあります。
否定したり叱ったりすることなく自尊心を尊重して関わります。
危険回避能力の低い利用者については、転倒に注意しながら見守ります。
生活全体の中から認知症をとらえ、自立を考えたケアを行います。
- 入所者の状態を観察し、
- 必要に応じて記録し、
- 上位者や医療職等にすみやかに報告します
- いつもと違う行動が見られた入所者を観察し、
- 脅威や不安を感じないよう近づき、
- 声をかけ、
- 入所者の行動や表情から不安・不快感等を軽減させます。
入所者の表情、感情表現、行動などいつもと違う様子にへの気づきが大切です。
なぜそのような行動をしたかを確認し、記録します。
穏やかな気持ちを優先する
認知症は理解力が低下し、現代の医学では認知機能の回復はできないとされています。
そんな中で、否定したり叱ったりしても解決しません。
「真実を理解してください」
「覚えておいてください」
と求めると相手の苦痛になります。
50代、60代で転職される方は、人生経験もあります。
穏やかな気持ちの幸せを理解されるのではないでしょうか。
認知症は治すことはできないけれど、穏やかな気持ちで幸せな生き方はできます。
それをサポートするのが介護職(認知症ケア)の役割です。
真実を伝えない優しさを理解する
2000年代は介護保険の理念にある「尊厳の保持」の解釈で一時期は右往左往しました。
尊厳を守るために「真実を伝える」か、「穏やかな気持ち優先」か、2種の方針がありました。
たとえば息子さんが先に亡くなられたケースを例にあげます。
認知症により息子さんが亡くなられたことを忘れておられます。
「息子が最近来ないけどどうしたんだろうね」と聞かれたら、
「息子さんは、亡くなりましたよ」と応えるとします。
すると「親より先に子が逝くなんて、私はなんて不幸なんでしょう」となります。
真実を伝えているのですが、おそらくあらためて哀しい気持ちに包まれてしまいます。
もしくは「この人は縁起でもない冗談を言う悪い人だ」となります。
あなた自身が嫌われて人間関係が難しくなります。
「息子が最近来ないけどどうしたんだろうね」と聞かれたら、
心の安定を優先して「息子さんは、お仕事が忙しいようですね」と応えます。
真実は伝えていませんが心の安定が保たれます。
「そうね、息子はがんばってるからね」と、不安だった気持ちが安心にかわります。
認知症ケアも施設ごとに方針が大きく違う時期がありました。
いまは「穏やかな気持ちを優先する」という方針になっています。
まとめ
未経験から介護職を目指される方に向けて、認知症ケアの実務について触れました。
50代、60代で介護業界に転職されると戸惑うことが多いと思います。
認知症ケアは、通常の身体の介護に加えて認知症の方との「心のかかわり方」が重要になります。
食事を食べたことを忘れている方に対して「もう食べましたよ」と言えば怒り出す方もあります。
そんな方には「今、作っています」と応えるなど、かかわり方の工夫が必要です。
いずれにしても「穏やかな気持ち」で過ごしていただくことに重点を置いて対応します。
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