【50代、60代の転職】介護未経験者の認知症理解 3つのポイント

紅葉を見る気持ちがわかり始めた50代,60代 豆知識(雑談)
紅葉を見る気持ちがわかり始めた50代,60代

私は介護施設の責任者として、のべ数百名の職員の採用面接に携わってきました。
面接に来られる50代、60代の方でも「認知症の方と接したことがない」という方もおられます。

認知症の症状は個々に違いますので、介護者は経験の積み重ねが必要です。
介護職として認知症を理解する上で大切なことを記します。

大きなポイントは3つあります。

  • 認知症と加齢による物忘れは違う
  • 認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)
  • 周辺症状(BPSD)の進展を防ぐと生活しやすくなる

認知症高齢者の生活を支える視点からポイントを解説します。

認知症と加齢による物忘れは違う

認知症と加齢による物忘れは違います。
ただし、はっきりと区別することは困難です。

物忘れ_男女の高齢者

加齢による物忘れは誰にでも起こります.
ヒントやきっかけがあれば思い出すことができます。


思い出した女性高齢者2

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により生じます。
認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。

リモコンの区別がつかない男性高齢者

エアコンとテレビのリモコンの区別がつかないなどの症状もあります。
認知症は、記憶自体が消滅するので思い出すことができません。

認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)

認知症の症状には、中核症状と周辺症状(BPSD)があります。
※「BPSD」は「周辺症状」とほぼ重なる概念です。

  • 中核症状
    物忘れや判断力の低下等、脳機能の低下を直接示す症状
    治療方法が確立されていないので改善は困難
    記憶障害、見当識障害、理解力・判断力の低下など


    認知症の中核症状
  • 周辺症状
    「中核症状」に伴って現れる精神・行動面の症状
    周囲の環境、ケアによって問題が起こることを防止できる可能性あり
    怒りっぽくなる、もの盗られ妄想、外出して帰れなくなる、な


    外出する男性高齢者を探すご家族

周辺症状(BPSD)の進展を防ぐと生活しやすくなる

認知症ケアでは、周辺症状(BPSD)の進展を防ぐため、心の平穏を優先します。
危険を伴わない場合は、感情的な共感を優先します。

笑っている男性高齢者

会話の内容が事実とは異なる場合でも否定しません。
共感する、うなずく、あいづちを打つ、ということに徹する場合があります。

真実を伝える弊害

一例をあげます。
たとえば、配偶者が亡くなったなど、通常であれば忘れないような記憶が消滅します。

困っている男性高齢者

あるご利用者様の例ですが、何年も前に亡くなられた奥さんを捜しておられます。
「奥さんは何年も前に亡くなられましたよ」と真実を説明すると「嘘をつくな」と逆上されます。

認知症の方は、記憶が消滅します。
認知症の方の世界の中では、奥さんが亡くなられた記憶が消滅しているのです。

感情だけが残る

妻が亡くなったのに自分が知らないはずがない、
この人はタチの悪い嘘をつく悪い奴だ、

この怒りの感情はなかなか忘れない場合があります。
怒っている原因を忘れてしまっても、怒っている感情だけが残ります。

怒っている男性高齢者

そして些細なことでも激高されるという状態が続きます。
信頼関係が損なわれ、このあとの介護も思うに任せません。

中核症状と周辺症状(BPSD)の整理

ここで注意したいのは、
配偶者が亡くなったという記憶が消滅するのは、認知症の中核症状です。

困っている男性高齢者

「嘘をつくな」と逆上するのは、認知症の周辺症状(BPSD)です。
これを切り離して考えてみます。

怒っている男性高齢者

生活に支障があるのは周辺症状(BPSD)です。
周辺症状(BPSD)への進展は、周囲の方の対応次第で防ぐことができます。

笑っている男性高齢者

個々の方の病状、症状によって対応が異なります。
が、周囲の方の対応次第で生活に生じる支障は防げます。

テレビを見て気分転換

この例の方の場合、
「私も奥さんをお見掛けしたらこちらに来るようにお伝えします」

「テレビでも見てしばらくお待ちいただけますか?」
と声をかけると座ってテレビを見始められます。

テレビを見る男性高齢者

やがて奥さんを捜していたことは忘れられました。
不安な気持ちに寄り添うことで、周辺症状(BPSD)への進展は防ぐことができました。

周辺症状(BPSD)の進展を防ぐ方法は試行錯誤の繰り返し

認知症の方が新規入所されると周辺症状(BPSD)の進展を防ぐ方法を試行錯誤します。
周辺症状(BPSD)が出ると、いろいろな対応方法を試してみてます。

たとえば「財布が無い」「お金を盗られた」という症状が出る方があります。
放置すると、大声を出す、他人を巻き込んで大騒ぎする、などの進展があります。

対応方法は個々の方によってかわります。

  • 一緒に探しましょう、と一緒に探すうちにあきらめる方
  • お金は持ってませんでしたよ、と言うとあっさりと納得される方
  • ここは国の施設だからお金はかかりません、というと安心される方

様々な対応を試行錯誤します。
この対応の引き出しの多さがベテラン介護職の底力です。

財布が無いと騒ぐ女性高齢者

その結果を介護記録に残し、申し送りで交替する次の職員に伝えます。
それを繰り返すことで1週間前後でその方への対応方法が確立します。

こうして周辺症状(BPSD)の進展を防ぐことができるようになります。

まとめ

この記事は、認知症の方と接したことがない方や認知症の予備知識がない方へ向けて記しました。
認知症のケアで重要なことは、周辺症状(BPSD)への進展を防ぐことです。

中核症状や周辺症状(BPSD)は個々の人によって違います。
中核症状や周辺症状(BPSD)は日によっても、時間帯によっても違います。

傾聴するスタッフ

朝は納得された話でも、午後からは激高されるということもあります。
100%の正解はありません。

認知症ケア方法を体得するためには、知識と経験が必要です。
かなりのベテランでも介護職同士で情報交換をしています。

高齢女性の肩を揉む女性

先輩に適切な対応を教われば、周辺症状(BPSD)への進展を防ぐことができます。
50代、60代ではじめて介護の仕事に就かれる場合もやってみてください。

いろいろなケースに遭遇して、自分の対応がハマったときは仕事が楽しく感じます。
われわれ50代、60代もいずれ自分自身や同年代の親しい人の認知症と向き合う時期を迎えます。

そのための準備、意識改革のチャンスでもあります。
認知症を悲惨だとか、かわいそうと思わず、「個性」として接したいものです。


それが自分たち世代の将来の幸せにつながるのだと思います。

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