50代、60代で転職を考えたとき、自動車運転免許証でできる仕事を探す方は多いと思います。
デイサービス、デイケアの送迎が真っ先に頭に浮かびます。
私の経験談を踏まえて、送迎ドライバーのお仕事を解説します。
この記事では「送迎業務での特異な事例Ⅲ」についてまとめてみました。
これらの事例は、この仕事を長くやっていると誰しもが経験しているようなことが多い反面、この仕事をしていない人から見ると驚くような特異な事例になりそうなものを選びました。
地域で最終的な受け皿のような立場の施設であると困難事例も多いようです。
困難事例の送迎は、それができる人に行ってもらうので過剰に恐れる必要はありません。
なお、送迎ドライバーの求人募集では、デイサービス(通所介護)とデイケア(通所リハビリテーション)の2種類の事業所がありますが、勤務条件が合えばその区別を意識する必要はないと思います。
この記事ではデイサービスとデイケアを総称して「デイ」と表現します。
文化住宅の2Fからおんぶして降りる
はじめての利用者を迎えに行ったのですが、文化住宅の2Fにお住まいでした。
室内で横になっておられ「上がってください」と言われて上がりました。
「階段は何とか下りられる」と言われるのですが、かなり不安定であぶなっかしく感じました。
立ってもらって手引き歩行を始めると膝折れ(膝がガクっと折れて立位が崩れる)の症状がありました。
危険を感じたので当日のお迎えは断念してケアマネに報告しました。
次回はケアマネが手配され、大柄な男性の訪問ヘルパーが来てくれ、おんぶ紐を持ってこられて、おんぶして階下に降りることになりました。
とても手際よく力強い男性ヘルパーで、文化住宅の階段をスイスイ降りてこられました。
後にも先にも、おんぶ紐を使用する場面を見たのはこの方の送迎だけでした。
傘を振り回して抵抗する人
独居の方ですが、認知症があり、デイにただ行きたくないではなく、拒否するために暴力に訴える人がいます。
介護拒否、暴言・暴力は認知症の症状(BPSD)なので仕方が無いのですが、介護者の身の危険はあります。
この方の場合は、傘を振り回して暴れるので一部の職員は怖くて迎えに行けなくなりました。
認知症の対応もケースバイケースですが「相性」が有効な場合があります。
「なんとなく〇〇さんに似ているなぁ」と感じると、初めて会う方でも身近に感じることがあります。
何となく空気感や波長が合うとか、顔見知りと顔が似ているとか、様々な理由があるのでしょう。
なぜか私がお迎に行くと友好的に接してくださいましたので、他の方の送迎が終わった後で私がその方一人だけを迎えに行くことにしました。
お迎えに行って呼び鈴を押してマンションの扉が開く瞬間が緊張のひと時なのですが、目が合うとニコっとされます。
「あら、こんにちは」
「お迎えに来ました」
「準備ができてないわ。まぁ上がって」
「では準備のお手伝いをしますね」
部屋の中はものすごく散らかっています。
着るものも積みあがっているのでよくわかりませんが、洗濯はされているようでした。
ご本人の前で入浴の着替え準備をして鍵を閉めて一緒に出ます。
デイの仕事範囲ではないところまで踏み込んでいますが、かなり認知症が進んだ方が独居している場合、ケアマネとの相談で少し踏み込んだ対応も必要な場合があります。
寝ている状態から起こして…
介護保険で利用できる点数や本人の負担能力などから、デイへ送り出しを担当する訪問ヘルパーを入れられないケースもあります。
ほぼ寝たきりの方を居室内まで迎えに行き、車いす移乗を介助して車いすのまま送迎車に乗る方もありました。
家族も了承済で、本人の同意もあり、ケアマネから特に依頼を受けて受託していましたが、そのシーンを客観的に見たら一歩間違ったら誘拐に見えるなぁ、と思いました。
迎えに行っても出てこない
独居の方が迎えに行っても出てこられないケースも多々あります。
他の方のお迎えもあるので、一旦はスルーするのですが、ケアマネにはすぐに連絡します。
そして他の方のお迎えが終わってから、再度その方のお迎えに行きます。
大声で家の外から呼びます。
外出して帰って来られず行方不明になる方、室内で亡くなっている方のケースもあります。
高齢者介護の仕事をしていると、そういう話をよく聞きますし、自分も遭遇します。
正直なところ、万一の場合の責任逃れの意味も込めて、結構長時間呼び続けます。
この時は30分ほど呼び続けたのちに2階から「ああ、寝てたわ」と顔を出されました。
いろいろ想像していた結末よりもいたって平和な結末で、少しほっこりしました。
まとめ
デイは利用者(要介護高齢者)の自立支援の一部です。
送迎が難しいからデイは利用できない、というわけにはいきません。
食事、入浴、服薬といった重要な日課が任されています。
さらに、引きこもり防止、社会性の維持などの効果もあります。
高齢者が地域で生活を続ける「自立支援」の重要なパートを担っているわけです。
「送迎業務での特異な事例」ではドライバーの機転も必要です。
困難事例の送迎は、それができる人に行ってもらうので過剰に恐れる必要はありません。
ここで事例を紹介しましたが、デイドライバーはプロとして誇りをもってできる仕事であることは間違いありません。
コメント