50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。
施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。
この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。
大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。
利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。
なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。
それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。
ここでは、経営改善に寄与する施策として従業員の確保(多様な人材の採用)について触れます。
外国人採用(特定技能採用)
外国人採用(特定技能採用)について、施設長や管理職の仕事としては、働きやすい職場をつくることに集約されます。
採用活動は施設単位で対処するのではなく会社(法人)の規模での対応が必要です。
私の知る限りでは、特定技能採用の外国人の方は、日本語でのコミュニケーションも問題なく、同僚や利用者ともうまくやっています。
日本の介護に対する理念(自立支援、尊厳の保持など)を理解して実践しています。
ネガティブなイメージはありません。
採用当初は中堅ベテランクラスを指導者に選定し、OJTでマンツーマンの指導を最低1か月継続します。
また、派遣職員であれば、就労に関する資格や手続きは派遣会社が責任をもちます。
管理監督職も頻繁な声掛けを通じて、困っていること、悩んでいることがないか、積極的に聞き取りましょう。
<参考>
外国人介護人材の受入れについて 厚生労働省HP
無資格未経験者採用
訪問介護以外の介護事業では、介護業務を行うための資格は特に必要ありません。
デイサービス、デイケア、特養、老健、有料老人ホームなどは、無資格でも介護職として就業できます。
また、介護職の人員配置基準で1名としてカウントできますので、無資格未経験者の採用は有意義なことです。
採用時は、適性があるか、やる気があるか、協調性があるか、すぐに辞めないか、などが確認ポイントです。
採用後は中堅ベテランクラスを指導者に選定し、OJTでマンツーマンの指導を最低1か月継続します。
指導者にもやる気を促すため、本人の実力と実績に期待しているので、指導者としてチャレンジしてほしい、という旨も申し添えます。
指導者が入れ替わると教え方が変わるので指導者は替えないほうが、混乱なく仕事を習得できます。
無資格未経験者を採用して早期で退職されると、職場の負担感が非常に大きくなり、思わぬところに波及するリスクがあります。
本人の技能と不安に配慮して独り立ちの時期を慎重に決めます。
障害者の採用
障害者雇用で清掃業務をきっちりやっていただければ、介護職の負担が軽減されます。
ただし、障害者人材も業務遂行能力に応じて売り手市場でもあります。
私が採用したのは、ハローワークからの紹介と障害者の就労支援事業所の紹介でした。
施設の清掃業務に就いていただいていましたが、まじめでよく働く半面、仕事ぶりをしっかり見ていますよ、という演出が必要な方もありました。
障害者を5名以上雇用する場合は、講習を受けた有資格者を障害者職業生活相談員として選任し、ハローワークに届け出する必要があります。
実年世代の採用(50~64才を想定)
50代~60代の実年世代は以下のように、おおきく3極化しています。
できる範囲でゆっくり働きたい
自動車の運転免許があれば、朝夕は通所介護事業の送迎ドライバー、日中は施設清掃などに従事していただけます。
家事の経験があれば、洗い物、洗濯、配膳などで就労していただけます。
新たに介護の仕事を取得したい
親の介護、自分の老後を考えるようになって、介護の仕事に興味を持たれる方も多くなっています。
また、現役並みの給与で生計を立てたい、という方もおられます。
無資格未経験であれば「無資格未経験者採用」の項目で触れた通りでよいのですが、できれば初任者研修か実務者研修を修了していただきたいところです。
これまでの経験を活かしたい
このタイプは管理職希望者に多いようです。
これまでの職務経験を活かしたい方には、別記事でも触れていますが、それぞれの活躍の場が用意できます。
うまく活用すれば施設運営の大きな力となってくださいます。
シニアの雇用(65~74才を想定)
無資格未経験でも施設内の清掃、洗い物、洗濯、配膳などで就労していただけます。
運転免許があれば通所介護の送迎業務も可能です。
経験者であれば介護職もできますが、しっかりとした決意をもってこれから介護を始めようという方は少ないようです。
求人のためにシルバー人材センターに求人登録をしましたが、私が担当した施設場合ほとんど応募はありませんでした。
地域による違いもあるかと思いますので登録されるほうが良いと思います。
実際の応募は、ハリーワークや求人メディアからの応募がありました。
年齢的に要介護者も話しかけやすく、スタッフもちょっとした相談をしやすい相手として、施設内の人間関係の中で大切な役割を果たしていただけます。
新卒、第二新卒の採用
新卒、第二新卒採用枠あり、などの求人情報を、求人メディアを通じて発信して募集します。
私が若いころは、人と接するのが嫌で機械相手の仕事に就きたい人が多かった時代でした。
いまは時代がガラッと変わって、優しく人と接する仕事がしたい、という気持ちで介護職に就かれる方が増えています。
本当にやさしくてアクがない若者には感心します。
一旦仕事を覚えると、安定的で情熱のあるしごとぉしてくれるので、職場に活気をもたらしてくれます。
対応は「無資格未経験者採用」の項目で触れたとおりです。
まとめ
介護業界は、高齢者(利用者=顧客)は増加、介護人材(従業員)は不足、という流れで、介護施設の稼働率を左右するのも介護職の確保の成否にかかっています。
このように多様な人材の採用を推進することで、人材の確保ができます。
求人メディアやハローワークの求人票でも、細かくターゲット別に展開することで思わぬ人材が確保できるケースもあります。
多様な人材を確保するためには、待ちの姿勢ではなく、戦略的にアプローチすることも必要です。
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