50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けてこれまでの実務経験の活かし方を記します。
他業種からの転身でも、お客様対応担当経験があれば、その経験は生かせます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、介護事業に関する勉強は継続してください。
なお、有料老人ホームの施設長は、管理者、ホーム長などと呼ばれるケースもあります。
現実には細部で違いがありますが、ここでは便宜上、同じ職種としてまとめて、呼称は「施設長」に統一させていただきます。
また、この記事での介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
まず、傾聴する
苦情が施設長や管理職まで上がってくる段階では、往々にして相手の感情が高ぶっています。
苦情対応の基本ですが、相手が言いたいことを言いきるまで、話を遮らずに聞くということが大切です。
相手の話を途中で遮ると「話を聴いてくれない」など2次クレームにも発展します。
相手が話し終わるまで聞く態度を見せることが必要です。
話を遮らずに聞くことで「言いたいことを言った」という感覚を相手に与えます。
感情を収める
まずは火が付いた憤った感情をいったん静めてもらうことに専念します。
感情に配慮するために注意することは、相手の話を遮らずに聞く、普段よりも丁寧な敬語を使う、感情に配慮して共感する、人のせいにして責任逃れをしない、軽い問題として片づけない、などがあげられます。
非言語コミュニケーションも重要です。
普段よりも神妙な面持ちで、服装や髪型の乱れも整えておきましょう。
また、場合によっては対応者が交代することもあります。
感情がこれ以上もつれないようにすることが初動の大切なポイントです。
謝罪する(感情を収める)
相手の感情に配慮して、まずはその場で謝罪します。
事実関係は未調査なので、嫌な思いをされたこと、不安に思われたこと、について謝罪します。
相手の話の内容が事実と違っているケースもありますので、感情には共感しながらも内容は調べて精査する余地を残しておきます。
そのうえで「いったん預からせてください」、「調べて厳正に対処します」などと回答し、今この場で相手の言い分をすべて認めてしまわないようにします。
暫定策の提示と今後の対応の説明
事実関係を確認するまでの時間稼ぎでも、安心できる暫定策の提示が必要です。
たとえば人間関係の問題であれば「もし今後同じようなことがあったらすぐに私を呼んでください」などと回答します。
そのうえで、よく調べて施設全体で協議して再発防止に努めます、という今後の方針を示します。
事実確認をする
苦情申告者の言い分を検証するための事実確認を行います。
その場にいた職員、他利用者などの話を聞き取ります。
聞き取った記録はメモでもいいので残します。
行政報告が必要な重大な案件であれば、聞き取った内容は個々人に自書の手書きで提出いただく場合もあります。
監視カメラがあればその映像も確認します。
映像も保存ができれば保存します。
対策案の立案
事実確認ができたら、対策案を検討します。
施設長や管理職が独断で対策を決定しても、現場では不可能な方法、負担が大きすぎる場合があります。
また、現場の心情にも配慮すべき場合があります。
できるだけ多職種の管理監督職と協議して実行可能で有効な対策案を決めます。
解決策を提示
苦情申告者に対策案を伝えます。
迅速かつ丁寧な対応をしたことを相手に伝えることが大切です。
また、施設のみんなで検討をしたことを付け加えることで、安心感につながります。
時間を取って、ゆっくりとわかりやすく説明します。
これによって、再発が防止できること、もし再発したらみんなが真摯に対応することなどを伝えて、不安を払拭します。
対策の周知徹底
ありがちなミスですが、対策が徹底できていなかった、対策を知らないスタッフがいた、などの事態は、最初の状態を超える憤りを生み出し、きわめて収拾が困難な状態になります。
対策の徹底状況を時々チェックするなど、施設長や管理職が確認することも重要です。
もし徹底できていなければ、職場の管理監督職を通じて、組織として徹底できるように指導します。
対策の徹底は最後の「詰め」にあたります。
「詰め」を誤るとこれまでの苦労が水泡に帰しますので注意しましょう。
賠償問題
賠償問題に発展した場合は、本社(本部)を通じて保険会社に連絡して対応を協議します。
介護保険事業者は、重要事項説明書で触れているはずですが、ほぼすべての事業者が損害賠償保険に加入しています。
明確な義務ではありませんが、入っていないケースは稀だと思われます。
まとめ
経験上、スタッフと利用者、利用者同士など、人間関係のトラブルが多いように感じます。
人間関係の場合は多分に感情的な要素がからみ、根本的な解決は困難です。
規模が小さな事業所でどうしても顔を合わせてしまいます。
50代、60代の実年世代で、他業種から転身されて配属される場合は、中規模以上の施設になりますので、かかわりを少なくする工夫に注力します。
50代、60代の実年世代で、他業種でお客様対応担当経験のある方は、一連の流れとポイントはご理解いただきやすいと思います。
他職種での職務経験を活かせる職場として、介護施設への転身もご検討ください。
※なお、度を越した苦情につきましては、ハラスメントとなりますので別記事をご参照ください。
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