50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。
この記事では認知症ケア(基本的人権の尊重)について記します。
実際の技術面はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。
すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。
介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。
なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。
介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
認知症の方の人権とは?
日本国憲法 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
(日本国憲法(条文抜粋) 文部科学省HPより)
人権とは,人間の尊厳に基づいて各人が持っている固有の権利であり,社会を構成するすべての人々が個人としての生存と自由を確保し,社会において幸福な生活を営むために欠かすことのできない権利である。
(人権教育・啓発に関する基本計画 法務省HPより)
人権に関するキーワードとして「生存」、「自由」、「幸福」があげられます。
認知症の方の人権とは、その方の「生存」、「自由」、「幸福」を侵害しないことが求められます。
しかしながら、介護する側の心得次第で要介護者の人権は容易に侵害されてしまいます。
介護職を目指した「人」として「自分自身を律するべき課題」であることをまず認識しましょう。
生存権
認知症の方は自由な生活をしても生存できるとは限りません。
食事を摂らない、清潔を保てない、事故に遭うなど、ご本人ができないことを支援する体制が必要です。
介護職としては、食事介助(提供)、入浴介助、排泄介助、口腔ケアなどの身体介護、掃除、洗濯などの生活支援も生存を支援するものです。
認知症ケアは、認知症の方の生存権を保障するための社会システムと言えます。
自由権
広く自由権と言われるものの中には、精神的自由、人身の自由、経済的自由があげられます。
認知症の方の自由権も同じ内容であることは当然のことです。
ここでは施設に入所されている要介護者で「判断能力が欠けているのが通常の状態の方」を想定すると介護職が気を付けなければならないのは「人身の自由」が最も大きな課題となります。
「身体拘束」は高齢者虐待防止法(2005年4月1日施行)よりも5年も早く介護保険法(2000年4月1日施行)で、介護保険導入と同時に原則として禁止されました。
身体拘束は、高齢者に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的苦痛与えるとともに、関節の拘縮や筋力の低下など高齢者の身体的機能をも奪ってしまう危険性があります。
身体拘束は原則として禁止としている背景を正しく理解しておきましょう。
幸福追求権
幸福には人それぞれ様々な尺度があります。
快楽の増加が幸福である、という考え方もあります。
しかしながら、認知症の方の幸せを考えた場合はどうでしょうか。
毎日を笑顔で過す、安定した感情で過ごす、不満や不安が無く過ごすなどの状態が、おおむね幸せであると言えるのではないでしょうか。
真実を伝えて納得いただくのが目的ではなく、感情が穏やかに安定することを目的としているのが認知症ケアです。
間違った言動を叱ったりせず無理に訂正しない、相手が理解しやすい言葉で一つ一つ話す、急がせると興奮しやすくなるのでゆっくり待つなどが、認知症ケアの基本です。
まとめ
50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、未経験から介護職を目指される方に向けて、認知症ケアの基本的人権にスポットを当てて触れました。
どうして認知症ケアは必要なのか、なぜ相手の間違いを訂正しないのか、本当にこれでいいのか、など社会経験が豊富であるゆえに抱かれるであろう疑問に応えるべく記しました。
超高度高齢化社会において、認知症の方の人権尊重意識をもって、介護をすることで、我々世代の社会的役割が見えてきます。
認知症ケアは、認知症の方の人権を守るものであり、憲法が保障する「基本的人権の尊重」の担い手となる崇高なお仕事です。
自分たちの老後のためにも、介護の仕事を通じて知識を習得しましょう。
コメント