50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
この記事では有料老人ホームの施設長で「山林処分の相談」についての経験談を記します。
背景
混在型(健常者と要介護者が入居)の有料老人ホームで施設長をしていました。
2000年代の話なので混在型の事例がなく、ネット上にも情報が少ない状況でした。
要介護の方と健常の方が一緒に暮らすというモデルで運営していました。
今となってはそれがかなり困難を伴うことはわかってきましたが、当時は措置制度から契約制度に移行した直後であり新しいモデルとして各施設がしのぎを削っていました。
現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。
地方都市で開業医をれていた方がご夫婦で入居されていました。
医師をされていたご主人は、認知症なくしっかりされているのですが、足が不自由で車いすで移動されていました。
奥様は健常者でした。
お二人の老後には何の心配もないくらいの貯えがあるとお伺いしていました。
山林処分の相談
先祖から受け継いだ山林を所有しておられました。
この山林をめぐって「息子も娘も『山林なんかいらない』というので困っています」というご相談を受けました。
山林を持っていると、余計な相続税がかかることがあるかもしれません。
しかしながら相続の段階で「山林だけは要らない」という処理ができないかもしれません。
私は「山林の寄付ができるかもしれない」というご提案しました。
ご夫婦は「早速話を聞きたい」ということで、司法書士の先生を紹介しました。
話が進まない
ご紹介して司法書士の先生とご夫婦は何度かお話をされたようですが、どうも話が進んでいるようには思えませんでした。
入居者のご夫婦に聞いても「いやぁ…まだちょっと…」と核心をぼかしてはぐらかされます。
気になって司法書士の先生に確認しました。
「私も話を聞いて行政に確認して、結果をご本人にも話をして『寄付する』という方向で納得されているのですが、まだ正式に受任していないんです」とのことでした。
心の葛藤
司法書士の先生を紹介した手前、放ってもおけないのでご夫婦に状況を確認しました。
ご夫婦のおっしゃるには「ご先祖が代々守ってこられた山林を私たちの代で手放すのは忍びない。いざ目の前で判断を迫られると躊躇してしまう。幸い相続税に充てる現金はある。子供たちが要らないと言っているが、相続してもらうよう話をしている」とのことでした。
損得勘定では持っていても損だけど手放すのは躊躇している。
先代までは代々林業を営んでいたので、山林の恵みで暮らしてきた。
山林の恵みのおかげで自分も医師になれた。
自分は山から離れてしまったが、山林への感謝の気持ちがある。
という深い想いが詰まっていました。
ご夫婦の想いを直接聞くことができましたので、その旨を司法書士の先生にお伝えしました。
後日、お子様が相続に同意されたという連絡をいただき、依頼はキャンセルとさせていただきました。
まとめ
農耕民族である日本人は土地への思い入れが強いと言われます。
林業の方も同じくご先祖が代々守り育ててきた山林へのこだわりがあるようです。
それは損得ではなく、我欲でも執念でもなく、自然の恵みへの畏敬なのかもしれません。
計算上はつじつまが合わない判断で問題を先送りにしたようにも見えます。
でもそれは人間性に根付いた人間らしい判断なのかもしれません。
少なくとも事情を知らない第三者が「損得勘定」だけで介入できるような話ではないようです。
老人ホームの顧客満足はあらゆる面で難しものだと感じました。
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