真夏以外の季節ではノロウィルスの感染に注意が必要です。
ノロウィルスの脅威は大きく分けて5点です。
感染力が強い
感染力の強さの例ですが、患者の嘔吐物の処理が不十分なため、それらが乾燥してチリやほこり(塵埃)となり空気中を漂い、それが口から入った場合、健康な人でも感染に至ることがあります。
ウイルスは人や動物の細胞内でしか生存・増殖できませんが、体外に出ても気温が20℃で10日前後、4℃だと40〜50日前後も感染力を保ちます。
繁殖力が強い
このウイルスに感染した患者の下痢便には100万個/g程度のウイルスが含まれています。
人は100個程度のウイルスで感染(体内で繁殖)するといわれています。
アルコール消毒が効かない
エタノールには比較的耐性で,その消毒剤には次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターのうすめ液が一般的)が推奨されています。
加熱による不活化は中心温度85℃,1分以上の加熱条件が推奨されています。
命にかかわる
死亡率にかかわるデータは計測が困難で公表されていませんが、発熱などによる体力低下、極度の脱水症状、吐いた物が喉に詰まる、などによって毎年多くの高齢者が亡くなっています。
治療薬、予防薬がない
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤、ワクチンはありません。このため、通常、対症療法が行われます。特に、体力の弱い高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行います。
脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。
ノロウィルス流行経験
私が施設長をしていた有料老人ホームでノロウィルスの感染が流行した経験があります。
新型コロナの出現前であった当時は外出が自由であったので、家族と外泊をして戻ってこられた方が、熱発し、その後、下痢の症状が出ました。
排泄は自立でトイレを使用されていたので、トイレの手すりなどから感染が広がったと思われます。
ノロウィルスにも効く消毒液を導入しており、一般的な感染防止対策は施していましたが、ノロウィルスは感染力が強く、他の入所者や職員にも感染が広がりました。
いまとなってはよく聞く「ゾーニング」もその時に初めて経験しました。
感染症発生フロアと他のフロアの職員の導線をすべて分けて感染拡大を防止しました。
潜伏期間がありますので対策徹底後も毎日のように新規感染者が出るという事態になりました。
食器、箸、スプーン、コップも使い捨てにして感染フロアから一切モノが出てこないようにしました。
感染者がいるフロアとは一斉の交流を断つのですが、感染者はさらに居室で隔離としました。
入室するスタッフは、使い捨てエプロン、マスク、手袋などの感染予防を入室前に着用し、退室時には室内で脱いで感染物専用ごみ袋に入れて退室します。
スタッフも感染すると休みますので無理を押したシフト調整も必要になりました。
職員の家族への感染拡大も心配で、仕事着は密閉して持ち帰り、自宅で他の衣類とは別に洗濯するよう指導しました。
自分やスタッフの安心生活も脅かされ私生活に大きく影響しました。
外出しない入所者にも感染が広がり、ご本人にもご家族にも多大なご心労をおかけしました。
心配したご家族からの問い合わせの電話が頻繁にかかってきますのでその応対にも追われました。
老人ホームが提供する最優先のニーズである「安全・安心」を脅かす結果となりました。
幸い、生命に危険が及ぶことはなかったので大事には至りませんでしたが、ピーク時は出口が見えない状況で、2度と経験したくない事態でした。
が、数年後には新型コロナの流行で経験することになります。
まとめ
感染症が施設で流行したら、関係者みんなが嫌な思い、辛い思い、哀しい出来事などに行き着きます。
これまでは感染予防意識にはかなり個人差がありましたが、新型コロナの流行によって、感染症まん延防止意識は高まりました。
このことによって感染症全般の発生件数が減少していると言われています。
トイレの手すりも今は定期的に消毒する習慣がついていると思いますので、このような感染予防策が形骸化しないようにしっかりと継続したいものです。
特に介護職員の1ケア1(イチケアイチ手洗い)の徹底は良いケア提供の基本となっていますので慣行しましょう。
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