50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
この記事では有料老人ホームの施設長で「愛人と面会禁止になった方」が入居されていたのでそのお話を記します。
背景の説明
要介護者専用の介護付有料老人ホームで施設長をしていました。
2010年代半ばの話なので現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。
入居者は、80代前半の男性。
奥様を亡くされ近隣の地方都市で独居されていましたが、認知症の進行とともに独居が難しくなり施設入所されました。
数年前まで居住地の地方都市で議会議員をされていたということです。
日常生活は自立ですが、認知症があり、短期記憶はほとんどない方でした。
血縁の家族は息子が一人おられ、入居にあたっては息子夫婦がキーパーソンになりました。
ご本人は認知症があり、人の顔はわかる。声もわかるのですが、見当識(日時場所など)障害があり、短期記憶もほとんどありませんでした。
選挙対策のクセでしょうか、人当たり良く明るい、誰とでも笑顔で接する方でした。
日中はスーツとネクタイで過ごされており、独居であったことを考えると、認知症であることに気づくのが遅れたかもしれないと思えるくらい、人への応対はしっかりされていました。
入居時点では医師により認知症の診断が出ており、周辺の状況を鑑みた上での判断はできない、と思われる状態でした。
入居時に面会希望者が来られた場合の対応について全員の方に確認するのですが息子夫婦は「本人が会いたい人なら会わせてください」とのことでした。
本人は議員をされておりましたが、息子は全然違う仕事をされていたようで「父の支援者関係はわからないので」という理由でした。
女性の訪問者
入居当初は特段の問題はなく過ごされていました。
いろいろな方が訪ねてこられる中、なんどか60才前後の女性がひとりで来られました。
本人に確認すると「おお、☆☆さんか、会うよ」と言われるので会っていただいていました。
楽しそうに冗談を交えながら歓談され、非常に仲が良いようにお見受けしていました。
ある日「ちょっと二人で外出したい」と言って来られました。
外出となると家族の了解をいただきたいのでしばしお待ちいただきました。
家族に連絡をすると「☆☆さんには会わせないでほしい」ということでした。
「誰に聞いて来たのかわかりませんが内緒にしてました。なにかトラブルになりかねないので会わせないでほしい」というご要望でした。
その旨を来訪者にお伝えし、お引き取りいただきました。
家族の来訪⇒その女性は面会NG
数日後にご家族が来られしばらくお父様の居室で話をされました。
帰り際に事務所に寄られ「〇〇さん(前述の女性)は父に会わせないでほしい。それと、父の外出は我々が付き添っているとき以外はNGとしてください」と言われました。
それとなくお伺いすると「恥ずかしながら、父と親しくお付き合いをしていた女性なのです。
どうも遺産相続が目的のようです。
外出して文書を作成されると厄介なことになるので外出禁止でお願いします」とのことでした。
女性の再来訪
その女性はまた来訪されました。
ご家族の要望であっていただくことができないとお断りしました。
「私はお金が欲しいのじゃない、会いたいだけ、会って話をしたいだけなのに…」といわれ、ロビーで大声を出して泣き出されました。
その鳴き声は本人がおられるフロアにまで響き「来ているんだろ、僕が下に行く、会わせろ」という騒ぎになりました。
「ご家族から重々言われていますので…」と双方をなだめましたがなかなか収集がつかずご家族に架電して「電話で話すだけならいい」という許可をいただいて電話を取り次ぎしました。
電話で会話
同じ建物内の1Fロビーと2Fを外線電話でつなぎました。
私は1Fに居たので女性の声が耳に入ります。
「△△さん(息子)は冷たい、ここまで来て会わせてもらえないなんて…」
「私はどうなるの?ほんと、約束と違うじゃない」
「△△さん(息子)に言うわ、お父さんを私に返してって言うわ」
などの声が聞こえてきました。
その後も何回かは来られたようですが、会うことはかなわず帰っていただきました。
まとめ
この二人と息子夫婦の間で、これまでにどういうことがあったのかはわかりません。
認知症を発症されなければ展開は違っていたのかもしれません。
老人ホームと入居者の関係で、そこまでは立ち入ることはできません。
おそらく議員を務めておられる間は順風満帆であったのかもしれませんし、老人ホームに入居した後も、生活の心配はない状況ではありました。
「隣の芝生は青い」とよく言われますが、人の人生は得てして大団円ではない、ということでしょうか。
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