50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
この記事では有料老人ホームの施設長で「生前葬を済ませていた高齢者夫婦」がおられたので、その時の経験(感想)を記します。
背景
混在型(健常者と要介護者が入居)の有料老人ホームで施設長をしていました。
2000年代の話なので混在型の事例がなく、ネット上にも情報が少ない状況でした。
要介護の方と健常の方が一緒に暮らすというモデルで運営していました。
今となってはそれがかなり困難を伴うことはわかってきましたが、当時は措置制度から契約制度に移行した直後であり新しいモデルとして各施設がしのぎを削っていました。
現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。
80代のご夫婦で入居を受け入れしました。
お二人とも認知症は無く要介護認定も受けておられませんでした。
息子夫婦が身元引受人でした。
父母は高齢で心身に負担がかかるので、親族や友人が訪ねてきても会わせないほしい。
というご要望を受けておりました。
ご主人の急逝
入居から数か月後、ご主人が救急搬送の後、急逝されました。
息子は「生前葬を済ませているので葬儀はしません」と言われました。
冷たく言われたわけではなく、普通の会話の中でそう言われました。
ご遺体は病院の霊安室に移されましたが、できるだけ早く移送してくださいと言われました。
しかしながら、一般的には葬儀社が代行してくださるご遺体の搬送、安置、火葬(手続き)については専門家に委ねなければなりません。
老人ホームは何社かの葬儀社が定期的に挨拶に来られますので、数名の方の名刺が常にあります。
そのうちの1社に電話をして事情を話しましたところ、快く車を回してくださり、その葬儀社が持つ会館の一室をお借りして安置されました。
老人ホームでのご遺体安置は?
少し話が変わりますが、ご遺体の安置について、老人ホームの入居者懇談会で話題に上がったことがあります。
「ここが終の棲家(ついのすみか)なのだから、ここに帰らせてほしい」という方、「よく知っている人のご遺体が同じ建屋に帰ってくるとトラウマになってしまう」とご意見は二つに分かれました。
結局、老人ホームではご遺体の安置はしないことで決着した経緯がありました。
老人ホームではご葬儀のお世話や手続きができないことと、必要に応じて近くの葬儀会館に参列者用の送迎車を出すことで同意いただきました。
「みんな近いうちに死ぬんだけど、その現実を見ないようにしているんだから…」というご意見が印象的でした。
寂しげなご様子
お話を戻します。
ご遺体が移送されたのは、ご遺体を安置するベッドとご家族が座る椅子が数脚あるだけの狭いお部屋でした。
火葬は葬儀会館の業者が段取りしてくれました。
「生前葬を済ませているので葬儀はしません」と言われた通り、宗教者(僧侶・神官・牧師)の来訪もなく、葬儀会館の一室で火葬待ち(法令により死後24時間経過しなければ火葬できないため)になりました。
私は安置直後に一旦施設に戻りましたが、夜遅くに再度訪問しました。
奥様はその狭い部屋でご主人のご遺体をじっと見つめながら椅子に座っておられました。
生前葬はどのようなご様子だったのかわかりませんが、今の奥様のご様子はとても寂しげでした。
夜のとばりも手伝ってか、その寂しげなご様子がドラマの1シーンのように目に焼き付きました。
このときお話ししたことや後日談については別記事で触れます。
まとめ
身近な方を亡くした哀しみと正面から向き合い続けるのは酷なことではないでしょうか。
この時の寂しげな光景は見るに見かねる光景でした。
私は生前葬を否定するつもりはありませんが、葬儀はその哀しみを乗り越えるための近親者のための儀式なのかもしれません。
生前葬をしたとしても、小さくてもいいので他界後に何らかの儀式があるほうが良いと感じました。
そのほうが、長年連れ添ってきた故人が他界された現実を近親者が受け止めるためのクッションが与えられる気がします。
これは老人施設での仕事を長年続けてきた私の経験からくる感想です。
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