50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
この記事では有料老人ホームの施設長で「老人ホームの居室に金庫を設置した方」がおられたのでそのお話を記します。
高齢者の猜疑心
高齢者の中には非常に猜疑心が強い方がおられます。
高齢により聴覚などの感覚が鈍ること、理解力が低下することなどによって猜疑心が強くなると言われます。
また、物事の中心より離れた位置におかれるなどで次第に猜疑心が強くなるとも言われます。
居室に金庫を設置
糖尿病で視力が低下し目が不自由になられたかたですが、財産はたっぷりお持ちでした。
目が不自由だから現金を手元に置いておきたいという強い願望がありました。
施設への支払いは銀行引き落としであること、日常生活に必要なお金は施設から引き落としになるので、現金を手元に置く必要はないことを説明しました。
しかし手元にまとまった現金を置いておきたいことと、その他にも保管したいものがあるから、どうしても金庫を居室に設置するということになりました。
金庫を見て選んでいただくため、何軒かホームセンターを見て回りました。
一番大きな金庫を購入
何軒か見て回って決めかねておられたのは、盗難の可能性を考えておられたようです。
小さい、軽い、という基準で見ておられ、盗難防止のため一番大きくて重い金庫を購入されました。
当時私も知識が無かったのですが、盗難防止のためには物理的な重量が大きいほうが効果的であることを教わりました。
私ともう一人若い男性スタッフとふたりがかりで何とか持ち上げ、車で運んで居室に設置しました。
家族との関係
猜疑心の強い方で息子や娘を信じておられませんでした。
金庫の鍵の場所、番号を息子や娘には教えず、当時施設長であった私だけが金庫の鍵の保管場所と番号を聞きました。
息子や娘が来られたら「この金庫の鍵の置き場所や番号は、わしとこの人しか知らないから」と言われるので少々気まずい思いをしました。
立場上、ご本人の考えを尊重しますが、ご家族と決裂するようなことは避けなければなりません。
ご本人は意識されていなくても、次第に老い衰えていかれ、判断力も低下する時期が来るわけなので、施設長と家族との関係維持は極めて重要です。
息子さんも娘さんもお父様のことをよくご存じで「父がいつもすみません。父の気が済むようにしてあげてください」とおっしゃっていただいて助かりました。
それから1年以内くらいだったと記憶していますが、この方の他界とともにご家族に金庫の番号をお伝えし、居室にあった鍵をお渡しして結末を迎えました。
まとめ
一般的に高齢者は、加齢により頑固になり、自己中心性、猜疑心が強くなるという傾向があると言われますが、逆に加齢を受け入れることで円満で寛容的な円熟した性格になる方がおられます。
おおむね2極化するように言われることがありますが、これはその人の置かれた環境や心身の状態によって左右されるといわれます。
老人ホームにおられる方も同じように、非常に難しい性格の方と丸く円熟した性格の方がおられます。
老人ホームの施設長は、どちらの性格の方もその考え方を尊重して自立支援をすることが求められます。
「介護現場を知る施設長」と「介護現場を知らない施設長」は、一長一短があります。
こういう場面は、50代、60代で他職種から転身した施設長の経験が、重用される場面でもあります。
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