父に出資を持ちかける息子(介護業界で経験)

経験談(雑談)
昭和の飼い犬

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、未経験から施設長や介護職を目指される方に向けて経験談を発信します。

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。


資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。

この記事では有料老人ホームの施設長で「父に出資を持ちかける息子」を体験したお話を記します。
この事例では認知症と家族とお金が絡むお話です。

老人ホームは疑似家族であるとよく言われますが、家族ではありません。

私自身も釈然としないのですが、家族の関係性にまで他人が口をはさむべきではないと思いました。

背景の説明

混在型(健常者と要介護者が入居)の有料老人ホームで施設長をしていました。

2000年代の話なので混在型の事例がなく、ネット上にも情報が少ない状況でした。

要介護の方と健常の方が一緒に暮らすというモデルで運営していました。

今となってはそれがかなり困難を伴うことはわかってきましたが、当時は措置制度から契約制度に移行した直後であり新しいモデルとして各施設がしのぎを削っていました。

現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。

ご夫婦で入所されている方がおられました。

夫は、軽度の認知症で、地元の大手企業の元役員で、経済的には豊かな方でした。


妻は、会話は成立しますが、短期記憶がほとんど残らない方でした。


長女は専業主婦でしたが、経済的には豊かな方でした。


長男(長女が姉)がおられ、何か事業をされているらしく、振る舞いは派手でした。


長女、長男にそれぞれ家庭があり、お孫さんもいらっしゃっていました。

長男から出資のお誘い

ある日、長男が久しぶりに来られました。

ロビーのような半ば公共の場所で、お父様に出資のお誘いをされていたので聞こえてしまいました。

「今度〇〇を事業化するから、お父さんに出資させてあげるよ」と言われていました。

「いい配当が期待できるから」というようなお話ですが、ちょっと恩を着せるような言い方が引っかかっていました。

ご本人の想い

後日、その入所者とふたりきりになったときに「ちょっと聞こえてしまったのですが、〇〇を事業化というのはすごいスケールのお話ですね」と水を向けてみました。

すると「そんなもんには興味ない」とそっけなく言われました。

その後、出資もスムーズに手続きをされたようで、長男は何度か来られましたが上機嫌でした。

長女からの電話

長女より電話があり「最近弟が来てないですか?」とのお問い合わせでした。

長女がキーパーソンで契約代行者でもあるので、最近こういうことがあったとお話ししました。

すると長女は「また弟が来たんですね、しょうがないなぁ、昔からそういうことがあって、出資と言っても何に使っているかわかったもんじゃない、父もわかってお金を出してるんです、もういいんです、いつものことです」と言われました。

詳しくお話を聞くと、弟はプライドが高くて、父からお金をもらうのに「お金をください」と言いにくいから「出資させてあげる」って言うんです。

父は昔から弟を甘やかして育ててきたから、いまでも戻ってこないことわかっていてお金をあげちゃうんです。

ということでした。

まとめ

「法は家庭に入らず」と言われます。

他人であれば問題になるような出資話ですが、父として見返りに期待せずに息子を支援する、という構図で、長女も納得されています。

私に言われた「そんなもんには興味ない」という言葉がそれをもの語っています。

世話の焼ける息子はいくつになってもかわいい息子で、父は認知症になっても息子を支援する、という家族の関係性で、他人の出る幕ではなさそうです。


これら家族の関係性も介護をするうえで大切にしなければならない「尊厳の保持」にあたる、と思う次第です。

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