50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
この記事では有料老人ホームの施設長で「措置入院(強制入院)を経て精神生活が安定した方」が入居されていたのでそのお話を記します。
なお、ピック病とは前頭側頭型認知症の一つとされていますが、当時「ピック病」という診断を受けておられたので「ピック病の方」として記載します。
これまでの概要
混在型(健常者と要介護者が入居)の有料老人ホームで施設長をしていました。
2000年代の話なので混在型の事例やピック病の情報共有が乏しく、ネット上にも情報が少ない状況でした。
要介護の方と健常の方が一緒に暮らすというモデルで運営していました。
今となってはそれがかなり困難を伴うことはわかってきましたが、当時は措置制度から契約制度に移行した直後であり新しいモデルとして各施設がしのぎを削っていました。
現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。
ピック病の方がピック病とわからないまま老人ホームに健常者として入居されていました。
老人ホームの玄関ロピーの椅子にいつも座っておられました。
毎朝、夜明け前に降りてきて、夕食後にお部屋に戻られます。
ロビーと同じく1Fに食堂、トイレ、大浴場があるので、一日中1Fで過ごされていました。
1Fで他の入居者に悪態をつく、大浴場で大便をする、歩いている方を後ろから押す、などの危険行為もある方でした。
緊急受診
危険行為があり、注意すると興奮して騒がれる、ということが続きました。
かなり危険があり、精神科受診を進めていたのですが、家族は「施設でみてほしい」という意向で受診は消極的でした。
あまりに興奮状態が続き、家族が遠方であったこともあり、口頭で家族の同意をいただいて私が付き添って少し大きめの精神病院で受診しました。
その方はトラブルを起こすたびに私が間に入っていたので、私を唯一の味方と思っていただいていたのか、素直に受診についてきてくださいました。
ただ、診察室で現状を説明している間も興奮しておられます。
「なにを言ってるの?私はどこも悪くない、帰りましょう」の繰り返しでした。
措置入院
「いま二人の精神科医が診察をしてお話を聞きました。他人に危害を加える恐れがあると判断しましたので、措置入院が適切と判断しました」と病院の医師が言われました。
その方は「いやです、入院しません、帰ります」と言われますが、時間をかけて説得し、半ば無理やりですが、私は一人で帰ることになりました。
穏やかになって退院
10日後くらいだったと思いますが、ご家族が遠方でもあり、その後何度か家族の代わりにお見舞いにうかがいました。
何重かの扉を経た急性期病棟(隔離病棟)におられました。
薬があってきたのか、その方はかなり穏やかになっておられ、私を見て手を振って笑顔で迎えてくださいました。
急性期病棟(隔離病棟)だけに、かなり興奮状態の方、誰もいないところに話しかけておられる方、点滴中で拘束されている方もおられました。
そんな中でその方は、健常者とも思えるくらいまで回復されており、ほどなく退院されました。
はじめて「ピック病」という診断名がつき、認知症の一種と診断されました。
常同行動
退院と同時に要介護申請をしました。
病院からはピック病の症状として「常同行動」があるので、ワンパターンの生活で支援をしてあげてください、と指導を受けました。
常同行動を受け入れ、介護リーダーの進言を加えて生活しやすい環境をつくりました。
まず、健常者のフロアから要介護フロアに転室いただき、皆さんが食事などで集うサンルームに固定の席をつくりました。
毎日、同じ時刻に居室から出てきて同じ時刻に居室に帰ります。
「おはよう」、「こんいちは」などのあいさつ程度で、スタッフや他の入居者の所作を見ているだけの毎日でした。
常人であれば変化が無さ過ぎて退屈するような生活ですが、その方貼っても明るく生活されるようになりました。
まとめ
本人も明るくなられ、面会に来た家族からも感謝されました。
「母のあんなに明るい顔を見たのは久しぶりです、ありがとうございます」とのお言葉もいただきました。
介護保険の創成期は、問題解決の方程式やノウハウのない中でした。
歴史のある施設も「措置制度」としてのノウハウがありましたが、「契約制度」としてのノウハウは未確立でした。
こういう経験もその時は大変でしたが、介護の業界で仕事をしてよかった、と思えるような経験でした。
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