欠勤した職員が自宅で亡くなっていた(介護業界で経験)

経験談(雑談)
東武鉄道 特急列車

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。


資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。

この記事では介護保険施設の事務長に就いていたときの経験で「欠勤した職員が自宅で亡くなっていた」というお話を記します。

背景

60代後半 男性 一人暮らし デイのドライバーとして数年前から勤務していました。

奥様とはずっと以前に離婚されており、奥様との交流はないが娘様が一人おられて、時々会っているということでした。

仕事はデイ送迎の自動車の運転と、身体介護を除く利用者のお世話(お茶出し、配膳など)を業務としていました。

無口で温厚な方で、朴訥とした雰囲気の方でした。

デイの利用者からは信望があり、慕われていました。

無断欠勤(出勤してこない)

ある日突然、朝定時に出勤してきませんでした。

当人のシフトでは3連休あけになります。


デイケア、デイサービスといえども、送迎の時間は厳守です。

親を送り出してから家族がお仕事に行かれるケースや、ホームヘルパーの方が送り出しで来ている方もあります。

それらの方が時間に遅れると他にも影響が波及しますので、重大なクレームになります。

ドライバーの欠勤は大問題です。

まじめな方なので、3連休でハメを外して無断欠勤、などありえないと思われます。

何らかの事情があるとは誰しもが思いました。


施設に残る職員に引き続き連絡を取るよう指示をして、デイの送迎に差支えがないよう、私が送迎ドライバーの応援に回りました。

連絡が取れない

ご本人の連絡先は携帯電話のみですが、携帯を呼び出しても出られませんでした。

送迎から戻ってすぐにご自宅に様子を見に行こうとしましたが、ご自宅は最近引っ越しをされて新住所は未届けでした。


雑談で「〇〇薬局の近くに引っ越した」と聞いている職員がいましたが、近くにはアパート、マンションが多くあり、1件1件調べるのは不可能でした。

少し離れたとこに住む娘様が緊急連絡先になっていたのですが、こちらも電話に出られず時間が過ぎてゆきました。

娘様と連絡がついて新住所がわかったのは当日の夜になってからでした。

本人を発見

デイ部門の責任者がすぐにその住所に向かいました。

アパートの一室ですが、キッチン横の窓が少し開いていて、中の様子がうかがえるとのことです。

窓を覗き込んで中をうかがうと本人がテーブルの前で座っている状態でした。

本人以外誰もいない様子で、窓の外から大声で呼びかけても反応がない、との連絡が入りました。

「どうしましょうか?」とデイの責任者に聞かれ、一瞬迷いました。

いくつか選択肢があります。

管理人を呼ぶか、警察を呼ぶか、突入するか…。

突入を選択

私は介護業界に身を置いている経験上、人命優先行動が身についています。

また、勝手に死亡と判断すると様々な問題が後で持ち上がることがあります。

「突入はできそうか?」

「窓が少し高いですが、可能と思います」


「じゃあ、突入してくれ、責任はとる」


「わかりました」


しばらくガサガサ物音がし、続けて報告がありました。

「いま本人の近くに来ました。動きません、息をしていません」

「じゃあ、すぐに警察と救急車を呼んでくれ」

「救急車もですか?」

「われわれが死亡と判断してはいけない。救急隊を呼んでくれ、私もすぐに行く」

「わかりました」

現地到着

私が現地に到着するとパトカーが一台停まっていました。

「救急車は『死亡しているから』と言って帰りました。いま警察が検証中です。こんなことが起こるなんて…」


デイの責任者はかなり緊張して表情がこわばっていました。

その様子を見て「突入」という判断も大きなストレスを与えてしまったと気づきました。

「ありがとう、つらいけれども仕方がなかった、我々は最善を尽くした、ご本人も納得されるだろう」

と声をかけました。

その後、娘様がご夫婦で来られ状況を説明し「お手数をおかけしてありがとうございました」とのお言葉をいただきました。

警察の現場検証も終わり、解放されたのは22時を過ぎていました。

突入したことに対するお咎めはありませんでした。

検死結果

その後、ご家族より連絡がありました。

警察の検死の結果、4日前の夕食がのどに詰まって、そのまま窒息。

苦しんだ様子はないので、静かに息を引き取ったようです、とのこと。


仕事が終わって家に帰って、一人で夕食を食べている最中に亡くなられ、3連休の間、食席の椅子に座ったままだった、ということです。

そのタイミングでの他界であれば、我々の発見が早くても救命することは無理であったことがわかりました。

ご葬儀にはデイの責任者とともに出席させていただきました。

まとめ

個人的な想いで恐縮ですが、いわゆる孤独死自体は不幸なことではないと思っています。

人も生き物なのでどんな形で最期を迎えるかは様々です。

たまたま一人だった、という受け止めをしています。

朴訥な職員の静かな最期は「安らかに逝かれた」という想いでした。

ただ、当日の対応、引っ越しの届が出ていなかったことなど、反省点があります。

私が「突入してくれ」と判断したことが、デイの責任者の心に傷を負わせてしまったかもしれません。
警察を呼ぶことが正しい判断であったように思います。


ケースバイケースで対応しましたが、とっさの判断の難しさ、怖さを考えさせられた哀しい出来事でした。

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