地方紙の新聞記者だった高齢者の魂(介護業界で経験)

経験談(雑談)
アメリカの黄色いバス(ラ コリーナ)

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。


資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。

この記事では有料老人ホームの施設長で「地方紙の新聞記者だった高齢者の魂」のお話を記します。

背景

混在型(健常者と要介護者が入居)の有料老人ホームで施設長をしていました。

2000年代の話なので混在型の事例がなく、ネット上にも情報が少ない状況でした。

要介護の方と健常の方が一緒に暮らすというモデルで運営していました。

今となってはそれがかなり困難を伴うことはわかってきましたが、当時は措置制度から契約制度に移行した直後であり新しいモデルとして各施設がしのぎを削っていました。

現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。

70代半ばの方で、ご夫婦で入居されていました。

ご主人は健常、奥様は脳卒中の後遺症で移動は車いすで軽度の認知症がありました。

読者と執筆者の関係

私は高齢者と深いお付き合いができるように、自分が勤める老人ホームの地域の情報たくさん得ようとしていました。

地元の新聞社が出版する史跡を訪ねる本を購入し、その本に掲載されている史跡をめぐっていました。
ある日、新たな入所を迎えることになりました。

ご夫婦での入居で、ご主人は少し緊張気味でした。

要介護の奥様と一緒にこれから老人ホームという団体のなかでの生活が始まるわけですから、その緊張は理解できました。

緊張をほぐしていただこうとお話をしていると、現役時代は新聞社におられ記者をされていたということでした。

私はその新聞社発行の愛読書があって史跡巡りをしているというお話をしました。

すると急に顔が明かるくなり「あれは僕が書いたんだよ」と言われました。


「いやー、こんなところで読者と会えるとは」と喜ばしい表情で話し始められました。

書籍とともに史跡

「この方と一緒に史跡巡りをしたいなぁ」と思いましたが、特定の入居者とプライベートで仲良くするのは他の方の手前あまりよくないと考えていましたので、折につけお話を聞く程度にとどめました。

「〇〇さんの家にはまだ世に出ていない古文書がたくさんあるんだ。それを少しお借りして読ませてもらうと、まだ誰も知らない史実が浮かび上がってくるんだ」など、独自で古文書も入手、分析をして史実の特定もされていました。

「あそこに行ったときは夕方だったから、山を下りる頃は日が暮れてきてね。

街の明かりが見えるんだけど、まわりでは何やらガサガサ獣の気配があるし、いやー、心細かったよ。

今度あなたが行くのなら、日が暮れる前に山を下りなきゃだめだよ」などのアドバイスもいただきました。

記者魂

老人ホームで不祥事ではないのですが、マスコミに取り上げられそうな事態が起こり、入居者に対して説明会を開催しました。

その方は記者魂が騒ぐのでしょうか、説明会では事実を浮き彫りにするような角度から質問されました。

「上手に質問されるなぁ」と心の中では感心していました。

案の定、翌日の新聞に掲載されました。

「僕がリークしといたからね」と言ってくださいました。

言葉の裏には「ガス抜きしたからね」という意図が感じられました。


一連の騒ぎの中で、その入居者の記者魂、生き様を感じとりました。

ガス抜き報道

その入居者が新聞社に情報をリークされたのは善意からでした。

マスコミ関係で「ガス抜き」といわれることがあり、事後すぐに報道されてしまうとスクープ価値がなくなります。

事後すぐに報道されていないと水面下で話が大きくなってから報道されてしまうというケースがあります。

まさにガスがたまって爆発するようなもので、小さなことでも大きくなります。

私はその方の配慮を心の底からありがたく感じ、深くお礼を申し上げました。

まとめ

この方は元新聞記者で記者魂を持ちながら、施設運営を助ける形でその技量を使われました。

人に歴史あり、と言われますが、生きて歴史を紡いでいるという側面もあります。


リタイヤ後のありようを自ら示しながら、新たな歴史を刻まれました。

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