混合型の有料老人ホームの施設長をしていた時の経験談です。(2000年代中頃)
要介護ではない健常者の方から相談を受けました。
混合型の老人ホームは、健常者の方にとっては高齢者マンションのような施設になりますので、介護サービスの提供がありません。
相談者の方は心療内科にかかっておられるとのことでした。
お話を聞くうち、それが健常者の勘違い(夢を見た?)なのか、心療内科的な病気のせいなのか、認知症が始まっているのか、判断に迷いました。
混在型の有料老人ホームに他業種から何ら経験を積まずに施設長に就任することがとても難しいことでした。
今から思えば無謀だったと感じています。
高齢者事業を知る上でのご参考になればと思い記します。
初回の相談内容
ある日相談があると言って来られたのでお話を伺いました。
「数日前の話ですが、気がつくと、私(=相談者本人)が下半身裸でケアスタッフが2名私の前に立っていた。わたしは心療内科にかかっているが、セクハラやストーカーなどの問題はない。誤解されていないか」という主旨でした。
初回相談の回答(対応)
「そういうことがあれば、私に報告があるはずですが、私は報告を聞いていません。
夜間にケアスタッフが2名一緒に行動をすることもありません。
お話を伺うとご自身はその前後の記憶がないということです。
これらを考え合わせて、夢を見られたのではないかと思います」
という主旨でじっくり時間を取って約40分間お話をしました。
この時点では夢を見て混乱さえていたのかもしれないと思いました。
2回目の相談内容
数日後にまたに相談がある、と言って来られました。
ご相談内容を要約すると
「気になることがあって、ここ2~3日ひげを剃っていない。
自分の身の回りのことができない。
実は、亡くなった家内が部屋に来た。
現実に来たのは亡くなってから初めてです。
何も言わずに40分くらい対峙していた。
そのとき何も言わなかった私の対応が悪かったと反省している。
もっと法要などもきちっとすべきだった。
寺に頼もうかと思う。
私のお金がなくなっている。
仏となっている妻が生活に使っていると思う。
妻にとても恨まれているようだ」
というお話でした。
2回目相談の回答(対応)
まずは肯定して心を穏やかにしていただかなければならないと思い「仏の世界で会話は必要ないので『対峙した』というのは一番良い対応をされたと思います。
気にされることはないです。
法要も大切ですが、私が住職から聞いた話では『身近な家人が毎日仏壇に手を合わせることが一番大切』と言われていましたので、そうされるのがいいのではないでしょうか。
また、お金がなくなるのは勘違いかもしれません。手提げ金庫などで管理され、場合によっては事務所の大きな金庫で手提げ金庫を預かります。
(事務所の金庫の中を見ていただいて)たくさんの入居者の方が預けておられますので安心です。
いろいろ細かいことが気になるようでしたら、お薬の影響かもしれませんので心療内科の先生に相談されてはいかがでしょうか」
という主旨でせかさないように、約1時間40分ほどお話をさせていただきました。
その他の周辺情報
後日また
「介護や要支援の中に精神的な支えが必要な方もあると思うが、そういうことは対応してもらえるのか」
とご質問がありましたので
「専門医がいるわけではありませんが、私でよろしければいつでもご相談にのります」
とお伝えしました。
また、ご自身で皮膚科を受診されたとき、
他人の自転車と間違ってカギを開けようとして「カギが開かない」と大騒ぎされた、
との連絡が皮膚科からありました。
紙パンツではない普通の布パンツを使用されていましたが、急に尿失禁の症状も出始めました。
つじつまの合わないお話も増えてきたのでご家族に連絡をして心療内科の受診に付き添っていただくよう依頼しました。
このころから個人情報保護法が施行されたため、施設職員が付き添っても、病名、症状、生活上の注意事項などを医師から直接聞くことができなくなりました。
まとめ
当時のことを思い出すと、もっと早く、もっと適切に、もっと細かく対応をしていればよかったと思います。
介護保険制度も導入当初であり、混合方有料老人ホームのノウハウはどこにも無い状況でした。
経験を積むうちに、近未来に起こりうることがある程度予測できるようになり、早めに対応ができるようになりました。
いまはどこの事業者でもノウハウが積みあがって相談相手もいますので、これから転職される50代、60代の方はご安心ください。
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