賠償責任を負ったケース2例、介護事故を免れたケース1例をご紹介します。
介護事故はゼロにはできないのですが、防止措置を講じることで事故発生のリスクを減らすことはできます。
係争事案を抱えると大変な思いをするので、それを避けていただきたく、私が経験した事例を紹介します。
賠償責任が生じたケース①
施設入所者の方が、朝食中に意識喪失され、救急搬送しました。
ご家族の意向で延命治療され、寝たきりになられ呼吸器での呼吸となりました。施設の責任で手遅れになった、とご家族は主張されました。
この主張を裏付ける根拠はないのですが、ご家族からは「誠意を見せてほしい」という言葉をいただきました。
搬送先の病院で対応くださった先生も「もしこれが病院内で起きていたとしても結果は同じだったかもしれない。何事もなく回復したとは考え難い」と味方になってくださいました。
施設の顧問弁護士と保険会社の顧問弁護士にも相談していました。
監視カメラが無くこちらの落ち度が無いと証明するすべもなかったので、話は進展しないのですが、それでもご家族の要望で何度も話し合いの場を持ちました。
漠然と「訴えられるのかなぁ」と感じていました。
私自身もほとほと疲弊してきたころ、損害保険会社が突然手のひらを返して「賠償しますので示談にしてください」と言ってきました。
保険会社の保険金の不払い、出し渋りが社会問題になりかけていた時期だったので、保険会社は手元の問題を早期解決したかったようです。
こちらの責任を認めるのは釈然としない気もしましたが、長く引きずることも得策ではないので示談の話をしました。
社会情勢によっても責任の有無はかわるんだなぁ、と感じた次第です。
賠償責任が生じたケース②
ある入所者が転倒され、大腿骨骨折という重傷を負われました。
「転倒事故がおきた時の映像を見せてほしい」と言われました。
これを隠すのは隠蔽になるのでお見せしました。
介護スタッフが当該入所者に「浴室に来てください」と声をかけた後、職員は立ち上がり、歩行を見守らずに前を歩いていきました。
当該入所者は立ち上がって歩行器の向きを変える際にバランスを崩して転倒しました。
「職員さんは見守ってないですね」と言われました。
それは事実であるので認めざるを得ません。
「今回の転倒は2回目で、1回目転倒した際に『今後は絶対に見守ります』、と言われたんですよ」と言われました。
私が入職する数年前の記録を確認すると「今後は転倒されないようにしっかり見守ります」と回答しました、という記録がありました。
見守ると約束した、でも見守っていなかった、だから骨折した、将棋で例えると3手で詰んでしまいました。
そこからは賠償範囲の話になりました。
事故の対応、回答はその場の雰囲気で相手の耳触りが良いことを言うのではなく「注意はしますが、今後もあるかもしれません」と言うべきで、この記録を見て驚きました。
このように過去の負の遺産が突然出てくる場合もあります。
介護事故を免れたケース
私が現場に入っていた時、大柄の方を抱えて立ち上がり介助をしました。
突然、私の腹筋が激しい痛みと共につりました。
つるとは、筋肉が異常な収縮を起こし、痙攣することです。
そのまま倒れそうになりましたが、一緒に倒れたら重大な介護事故で、お互いが大けがをするでしょう。
しかも相手に落ち度はないので100%こちらに責任がある事故です。
まさか自分が重大な介護事故の当事者になるとは夢にも思っていませんでした。
とっさに相手にしがみつくことで腹筋を伸ばし、介助中にストレッチをしました。
「なにしてるの」と聞かれましたが「ええ、ちょっと」とごまかし、事なきを得ました。
軽めのエピソードのようですが、それほど介護事故は身近で起こりうるという事例として紹介しました。
まとめ
異業種参入の方で普通に仕事をしてきた方は、訴えられそうになった経験のある方は少ないと思います。
しかしながら、人為ミスは誰にでも起こりえますので、介護事故の発生は避けられないと思います。
最近はリスクマネジメントという呼称で事故防止に取り組みます。
リスクマネジメントについてもしっかりと取り組まれることをお勧めします。
コメント