50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けてこれまでの実務経験の活かし方を記します。
他業種からの転身でも、製造経験があれば、その経験は生かせます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、介護事業に関する勉強は継続してください。
製造管理経験がある方、自分の強みに自信をもってさりげなくその能力を発揮して求心力を高めます。
私が知っているのは昭和の工場なので説明が届くかどうか一抹の不安がありますが、同世代の50代、60代の実年世代の方にはわかっていただけrのではないかと思います。
なお、有料老人ホームの施設長は、管理者、ホーム長などと呼ばれるケースもあります。
現実には細部で違いがありますが、ここでは便宜上、同じ職種としてまとめて、呼称は「施設長」に統一させていただきます。
また、この記事での介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
ムリ・ムダ・ムラの排除
製造業の経験があれば、ムリ・ムダ・ムラを見つけることができると思います。
これらの事例を見つけたら、ネットで検索してみると解決策が見つかることがあります。
それぞれ様々な背景でムリ・ムダ・ムラが生じているので、その点を改善したいという方針を出して効率の良い代替案をみんなで検討します。
ムリ
(事例)体重の重い利用者を一人で抱えて介護するなど、ムリをしていいか?
(対策)ノーリフティングケア※の考え方を導入する
※ノーリフティングケア:人力のみの移乗を禁止し、患者さんの自立度を考慮して福祉用具を
活用しようという考え方。
ムダ
(事例)ショートステイの持参物の返し忘れ、紛失を防ぐため持参物の書き出し記録に手間をかけている。
(対策)ショートステイの持参物返し忘れ防止のためデジカメで写真を撮って記録を残す。
ムラ
(事例)特定の職員に業務が集中してる。
(対策)複雑な業務の流れを書き出して時系列の順番に並べ替えることで、誰でもできるようにする。
5Sへの取り組み(整理・整頓・清掃・清潔・躾)
製造経験があれば「5S」が身についている方も多いと思います。
介護現場では人に依存しており、組織で仕事をするという状況にはなっていないケースも散見されます。
5Sを徹底して組織で仕事をすることが定着すれば個人の負担感も低減されます。
整理の事例
保管期限が過ぎた記録と保管すべき記録が一緒に保管されているため、記録が山積み状態になっているので、介護保険の記録は5年保管なので、保管期限ごとに区分して保管する。
整頓の事例
紙オムツ、紙パンツはサイズごとに置き場所を決め、それぞれの入所者がどのサイズを使用しているか、一覧表を作成して貼り付ける。
清掃の事例
入所者が食事をするスペースの床が汚れて転倒リスクが高まっていることもあります。
人材確保が難しい場合は、たとえば障害者雇用枠で雇用した人材やシルバー人材の高齢者を清掃専任に充てるなど、創意工夫をもって清掃を実践しましょう。
清潔の事例
食前・食後に次亜水などでテーブルを拭くなど清潔を心がけることで食中毒や感染症の蔓延防止効果があります。
躾の事例
決められたことを守って仕事をする習慣を徹底しましょう。
決められたことを守れない職員には、リーダーを通じて指導するなど、躾の習慣も職場にとりれましょう。
作業の標準化(手順書の整備)
製造経験のある方は「作業指導書」などの呼称で親しみがあると思います。
食事介助、服薬介助など、業務ごとに標準化して手順書を作成します。
たとえば、食事介助の際には手袋をすることで感染症のまん延防止効果がありますので、施設のルールに定めて、手順書に落とし込みます。
作業手順書を積み重ねることで、作業効率が上がり、介護事故が減少し、感染症のクラスターの発生リスクも低減します。
まとめ
このように製造業の経験者にはピンとくる改善視点が、介護の現場にはたくさんあります。
介護の現場はその道の専門家が多数いますので、その職域で業務指導をすることは困難です。
しかしながら、その道の専門家が組織で仕事をする難しさを少しずつでも解決できるのが製造経験です。
これらの施策は介護現場が抱えている過重労働感を和らげる効果があり、ケアの質の向上、離職の防止などの効果が期待され、厚生労働省も推奨※しています。
現場職員の技量、プロ意識に配慮しながら改善を進めていくことができるのが製造経験者です。
※より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き) 厚生労働省ホームページより
コメント