50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けてこれまでの実務経験の活かし方を記します。
他業種からの転身でも、事業計画立案の経験があれば、その経験は生かせます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、介護事業に関する勉強は継続してください。
なお、有料老人ホームの施設長は、管理者、ホーム長などと呼ばれるケースもあります。
現実には細部で違いがありますが、ここでは便宜上、同じ職種としてまとめて、呼称は「施設長」に統一させていただきます。
また、この記事での介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
介護施設の事業計画
未経験で配属するなら、定員100人クラスの大規模施設か、本社(本部)になると思われます。
施設の場合、来年度の事業計画の丁寧なフォーマットがあればよいのですが、フォーマットから自分なりに作るケースもあります。
今年度の事業計画に対する実績が昨年度と本年度の途中までは出ていると思いますので、変動要因を加味して来年度の計画を作成します。
このときに参考になるデータが公表されていますので紹介いたします。
申し訳ないですが、この記事の内容は、自分で考えた我流であり、説明が分かりにくいかもしれませんので、事業計画立案の経験がある方は、記事中の「参考データ」だけを見ていただいて、実務に活用いただければと思います。
収入(売上、収益)の変動要因※
※注:会計上の用語として、株式会社の「売上」≒社会福祉法人「収益」
介護事業以外の収入は収益に影響するほどのものは無いのであまり気にしなくて良いと思います。
また、月ごとの変動はありますが、季節要因による大きな影響はありませんので、一定か、右肩上がりで設定すればよいと思います。
収入の変動要因① 介護保険法の改訂
介護保険法改訂の影響は要注意です。
本来3年ごとですが、最近は途中でもよく変わります。
介護保険法が変わると収入や人件費が変動する要因になります。
次年度の改訂動向は、ネットなどであらかじめ調べておきましょう。
改定内容(保険点数など)が未確定であればそれなりに見込んでおけば良いと思います。
収入の変動要因② 稼働率
定員の上限に張り付くような稼働率で運営するのが理想ですが、かなり困難になります。
定員を超える受け入れができないので、MAXが100%です。
ショートステイなどでは、退所日に別の入所を受け入れると、100%を超える運営も可能ですが、それはまた別途触れることにします。
各介護事業ともおおむね定員割れをおこしていると思われます。
現在の稼働率が低ければ、稼働率を上げる計画を立てましょう。
稼働率を売上(収益)金額に換算する計算式を作成して、稼働率計画を売上(収益)計画に連動させるとわかりやすく説明できます。
支出の変動要因
支出の変動要因① 稼働率の変動(稼働率を上げる)
稼働率を上げる計画を立てると、人件費も連動して上昇します。
利用人員が増えれば介護・看護職員も増員が必要です。
簡易的に常勤換算人員1名の人件費(福利厚生費込み)を算出して、稼働率の変動に応じた必要人員を小数点1ケタ単位で算出し、人件費に換算します。
また、稼働率増に伴って送迎車両を増やすなど、稼働率の変動に応じて費用が変動する項目を洗い出して、計画に加味してください。
支出の変動要因② 人材確保のための費用
人材の確保が年々困難になっています。
人材の確保が事業の成否を決めると言っても過言ではありません。
これを克服するためには離職の防止と新規作用の推進が必要不可欠です。
良質な人材を確保するために、人材紹介費用、求人広告費用などあらかじめ費用計上を心がけましょう。
参考データ
各事業の平均的な経営指標が算出、公表されていますので、計画立案、改善の参考のためご紹介します。
なお、清掃、給食を自社でやっていれば人件費、委託していれば委託経費になりますので、平均値と比較する際に気をつけてください。
介護保険サービス事業全般については、下記を参照ください。
独立行政法人 福祉医療機構 経営サポート事業
https://www.wam.go.jp/hp/guide-keiei-keieiqa-tabid-1976/
有料老人ホームについては、
公益社団法人 全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームの事業適正化に関する調査研究事業」報告書
https://www.yurokyo.or.jp/contents/view/3832
まとめ
介護事業は収支の大枠が国の施策で定められているので、施設単位の施策では大きく成長する余地はほぼないので、施設単位では毎年似通った事業計画になると思います。
収入は、介護事業収入がほぼすべてで、定員に対する稼働率が主な収入変動要因です。
支出は、稼働率に応じて変動費が変動します。
収入、支出とも、大きな変動要因は定員に対する稼働率です。
稼働率を上げるために必要なことは、人材の確保です。
結論として「人材の確保と稼働率の向上」という方針に集約されます。
これをどのように現場へ落とし込むかは、別記事で触れます。
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