50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けてこれまでの実務経験の活かし方を記します。
他業種からの転身でも、管理監督職の経験があれば、その経験は生かせます。
業種が変われども、リーダーシップに期待されることは共通です。
この記事ではリーダーシップの背景要因について触れます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、介護事業に関する勉強は継続してください。
なお、有料老人ホームの施設長は、管理者、ホーム長などと呼ばれるケースもあります。
現実には細部で違いがありますが、ここでは便宜上、同じ職種としてまとめて、呼称は「施設長」に統一させていただきます。
ポジションパワー
上司は部下に対して指揮命令権があり、これをポジションパワーと呼びます。
組織上の職位によってマネジメントをする役割を担っています。
これによって組織の構成員は上司に従います。
「組織を目標に向けて組織を効率的に運営する」という目標がありますが、このポジションパワーだけに頼ると組織を目標に向かわせることは難しくなります。
ポジションパワーはその立場になればだれでも組織から与えられるもので、本来は個人による差は無いものです。
ヒューマンパワー
ポジションパワーは組織から与えられる力である反面、ヒューマンパワーにあたる部分は個人の資質にあたるものです。
介護未経験で管理職応募する50代、60代の実年世代の方は、この点に期待されています。
全体のことを考え、構成員全体の幸福の観点から判断、指揮命令をすることで、部下の信頼は厚くなります。
利己的な行動を控え、使命感、責任感で行動することで、部下は心底から従い、組織を目標に向かわせることが可能になります。
潜在的に保持しているヒューマンパワーを最も発揮するためには、精神的に安定した状態を保つことが重要です。
組織のコミュニケーション
トップダウンのコミュニケーション
上述のポジションパワーと相通じるものですが、上司から部下への指揮命令を指します。
指揮命令には、報告・連絡・相談が伴うように、一方通行にならないよう配慮ください。
ボトムアップのコミュニケーション
報告・連絡・相談をまとめて「ホウレンソウ」という言い方をする場合があります。
部下から上司に意見が言いたい場合に「ホウレンソウ」の徹底は有効です。
介護の職場で気を付けたいことは、トップダウンには慣れているが、ボトムアップには慣れていない傾向があります。
上司の指示がマトを外れていると感じてもしばらくは辛抱して黙って従いますが、これが続くといずれ大きな反発となります。
部下からの意見が出ない時は、苦労を先送りしていることもあります。
普段から気を付けてボトムアップの意見が出やすいように働きかけましょう。
ヨコのコミュニケーション
介護職場のリーダー同士のコミュニケーションなどを指します。
あるリーダーが困っていることについて、他のリーダーが成功事例を持っているケースも多々あります。
公式の会議とは別にヨコのコミュニケーションがうまく図れるように気遣いをしましょう。
インフォーマルなコミュニケーション
以前の職場ではある程度見えやすかったインフォーマルなコミュニケーションが、LINEやSNSを通じて見えにくくなっています。
ここから、根も葉もない噂が流れ始めると組織運営に大きな支障をきたします。
気を付けたいことは3点あります。
・業務に関することは個人のSNSなどにアップさせないこと、
・組織の長として任意の有志グループに属さないこと、
・正確な情報は適宜組織を通じて発信すること、
その他のリーダーシップの要件
その他のリーダーシップの要件を参考までにキーワード的に列記します。
この中でいくつか自分の得意とする分野があれば、意識して仕事に取り入れて伸ばしていきましょう。
先見性、独創力、判断力、思考力、情報収集力、専門知識、創意工夫、折衝力、指導力、決断力、洞察力、積極性、信頼感、公平性、柔軟性、責任感、説得力、思いやり、心身のスタミナ、コミュニケーション能力、信念、行動力、企画力、体力、精神力。
まとめ
このように、介護の職場で施設長、管理職に就くにあたって、介護現場の経験はあるに越したことはないですが、なくてもそれを補う「違う視点」に期待するところがあります。
私も介護現場未経験で施設長に就任しました。
それまでの職務経験を踏まえて「ホウレンソウ」の徹底、ウソの報告だけは絶対にダメ、ということだけ、重点的に指導してきました。
目を見張るような成果を上げたとは言い難いのですが、複数の施設で「目標に向う組織を作り上げた」という成果があったと自負しています。
50代、60代の実年世代の方々が、介護現場未経験でも自分の強みに目を向けて、積極的にチャレンジしていただければ介護業界の発展につながると行政、業界ともに期待しています。
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