50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けてこれまでの実務経験の活かし方を記します。
他業種からの転身でも、ICT担当経験があれば、その経験は生かせます。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、介護事業に関する勉強は継続してください。
なお、有料老人ホームの施設長は、管理者、ホーム長などと呼ばれるケースもあります。
現実には細部で違いがありますが、ここでは便宜上、同じ職種としてまとめて、呼称は「施設長」に統一させていただきます。
また、この記事での介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
介護業界ICTニーズの背景
介護施設でのICT活用は遅れています。
別記事でも触れましたが、日本社会の高齢化の進み方が加速し、官民一体となって受け入れ態勢を整えるため社会資源を作り上げてきました。
介護業界を急成長させるため、多くの人が参画できるよう人海戦術的な拡大が続きICT活用も遅れました。
また、介護事業者は人員配置基準があるため人員の削減には限界があり、生産性向上による人員の削減が経営の改善につながらないという背景があります。
さらに、職人気質の業界なので、2000年代は介護現場の勤務者でキーボードやタブレットを使える人はごく僅かでした。
当時の携帯はガラケーで「ガラケーでメールなら打てる」という人が多く、加えて、Wifi環境やヒューマンインターフェイスも発達途上でした。
このような環境下にあってこれまで介護現場でのICT活用は進んでいませんでした。
第一段階は記録の電子化
介護業界の急拡大の先が見えてきましたが、介護人材の不足には拍車がかかっています。
このままでは必要な社会資源を確保できない時代に突入してしまいす。
このような背景から、これからはハコモノの拡充だけでなく、生産性の向上と人材確保に舵を切っていこう、という時代に推移しています。
ICTに関する加算や補助金も拡充されてきました。
スマホが普及したことでヒューマンインターフェイスが使いやすい方向に発達し、ようやく現場で使えるレベルの機器が実用化されはじめました。
職人気質の現場でも、スマホ感覚で操作できるタブレットを中心に、紙ベースの記録を電子ベースに置き換えが進んでいます。
ICT導入の第一段階は介護事業用のパッケージソフトで、入所サービス、通所サービスの記録、利用者管理、ケアプラン作成、介護保険請求などの事務系の処理も加えた多機能ソフトを必要に応じてカスタマイズして利用しています。
これらの新規導入、リプレース導入、バージョンアップ、介護保険法改訂などに対応することが介護事業者の責務となってきます。
離職防止につなげる介護DX
介護DXの発達により介護職は、人にしかできない仕事に集中でき、リスクや不安が解消される、など離職を防止する効果を期待します。
介護職も人間なので、何度も同じ説明を繰り返したり、こちらに落ち度がないのに怒鳴られるなどで、認知症対応で精神面に不調をきたす人は少なくありません。
介護職の代わりに、介護ロボットが丁寧に対応してくれるととても助かります。
夜間でも目覚めると急に立ち上がって転倒する方もおられます。
事故に責任がないとしても、緊急対応で一時的に大きな負荷がかかるとともに、人がけがをする姿を見るのは多大なストレスです。
事故前後の状況をまとめて、口頭及び文書で報告するという仕事も増えます。
もしも、呼吸、心拍、体動などのセンサーデータからAIが判断して、目覚める10分くらい前から「目覚めるかもしれないよ」と教えてくれたら、目覚めたときに対応するため仕事の段取りが組み立てられ、ストレスや仕事量の軽減につながります。
最先端の介護DX技術を順次導入することが、介護制度が継続可能となるカギを握っています。
介護職は人にしかできないことをやる
人にしかできない仕事は何か、ここで具体的な事例を挙げても数年後には覆っている可能性があります。
ただ、我々が生きているうちに介護職の仕事がすべて介護ロボットに切り替わることはあり得ないと思われます。
数十年レベルで見ても、人の仕事は残ります。
医療、介護事業は今後とも人に依存することは欠かせないので、人の世が続く限りはほぼ永遠に人の仕事は残ります。
それは人間が生物であるがゆえ、お互いが生かしあっているという本能的な部分は、取って代われないためだと考えます。
まとめ
ここで述べたような理由によって介護業界では、少し遅れてICTブームになっています。
他業種でICT経験のある方には、現在も今後も担っていただきたい仕事がたくさんあります。
介護業界なので、他業種と比べると成果がすぐにわかり、人と触れ合う機会も多いと言えます。
これが50代、60代の実年世代にとっては精神衛生上、非常に大切なことだと思います。
介護業界のために、転職するご本人のために、ICT経験者が転職を考える際に、介護業界を選択肢に加えていただきたいと感じています。
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