50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。
この記事では更衣介助について記します。
実際の介護手順はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。
すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。
介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。
なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。
介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
挨拶、声掛け
居室に伺ったらノックをして入室、名前を言って挨拶をします。
自分が居室に住んでいる立場になってみると、いきなり何も言わずに人が入ってくるのは怖いと思うし不愉快ですね。
相手の心の準備に配慮して3回のノックを習慣づけましょう。
更衣であれば朝なので「おはようございます。〇〇です。お着替えお手伝いしましょうか」と声掛けをしましょう。
ここでは毎日同じメンバーが顔を合わせる施設を想定して「〇〇です」だけの自己紹介にしています。
訪問介護であれば名札を見せて「ヘルパーの〇〇です」などのルールがあると思います。
衣類の選択
当日の気温、前日との違い、当日の入所者の体調などを十分に考慮して、2点以上の衣類の選択肢を提示します。
その際に入りの破れやほつれもあらかじめ確認します。
「きょうは昨日よりも少し寒いので、ちょっと厚手の服にしましょうか」など声掛けをして、入所者の好みの洋服を選んでもらいます。
環境整備
衣服を着替える際に服を脱ぎますので、まず気温が低すぎないか、服を脱いだ時に寒いと感じないか、確認します。
また、着替えている場所が他の利用者から見えていないか、例えば窓の外のマンションから見えていないか、配慮します。
居室の扉を閉める、カーテンを敷くなど、プライバシーへの配慮も尊厳の保持になります。
更衣介助
ここでは「自立支援」を意識してください。
ボタンを留めることができるのに介助してしまう、靴下を履くことができるのに介助してしまう、など、ご自身でできることを奪ってしまわないようにします。
身体の片側に麻痺がある方は、脱衣の際には健側(麻痺がない側)から患側(麻痺がある側)の順番で、着衣の際には患側から健側の順番で行います。
麻痺がある側は動く範囲(可動域)に制約があるので、衣服が自由に動く状態のほうが着脱がしやすく、身体への負担も少なくなります。
脱健着患(だっけんちゃっかん)と覚えます。
脱衣時には体のあざや皮膚の状態の異常も観察します。
衣服を整える
ある施設の研修で「自分の服の袖をねじってみてください」と言われて袖口をもって手首の周りを巻くようにねじってみました。
「どうですか、気持ちが悪いでしょう」と言われました。
衣服がねじれているととても着心地が悪く落ち着かないものです。
その状態で我慢を強いるのは「尊厳の保持」の観点から外れます。
着衣後の衣服を整えるのも介助に含まれます。
脱衣後の衣類も丁寧に折りたたんで適切な場所に置きます。
経験した事例の紹介
私の経験事例をひとつ紹介します。
脳梗塞で右麻痺のある方でした。
更衣の際に右手に袖を通すと、あとは左手を使って自分で肘までは衣服を通したい方でした。
それをうっかりお手伝いしてしまったために激怒されました。
その場ですぐに謝罪したのですが、高次脳機能障害も患っておられるため、感情コントロールも困難な方でした。
非常に険しい表情で睨みつけながら「もう二度と私に触るな!」くらいのことを言われました。
その後も険しい表情が続いていますが、自身で肘まで通した後は、衣服を背中に回して左手を通すお手伝いをしないとご自身ではできません。
できないことがわかっているのにここで介助を中断すると「尊厳の保持」を放棄することになります。
ものすごく険悪な空気感のなかで黙々と更衣介助を継続しました。
いつもは痛くない動作でも「イタイ、イタイ」と言われながら更衣介助を継続しました。
介護職ならよく経験する話ですが、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、あえてよくある事例を紹介しました。
まとめ
更衣介助にも「尊厳の維持」、「自立支援」の要素がふんだんにあります。
これらの理念を介護に落とし込むことを理解していなければ、同僚や先輩の話が理解できないかもしれません。
また、更衣介助もリスクのある介助で、片麻痺のある方の更衣介助で骨折事故になったケースを聞いたことがあります。
入所者の身体能力に応じた介助を心がけましょう。
コメント