口腔ケア(50代、60代の転職)介護職の仕事07

介護職の仕事
気動車のすれ違い

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。


資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。

おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。

この記事では口腔ケアについて記します。

実際の技術面はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。

すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。

介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。

なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。

介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。

口腔ケアの重要性

要介護高齢者の口腔ケアでは2つの視点が必要です。

1つは口の中の細菌や汚れを除くこと、もう1つは口腔機能訓練やマッサージなど(後述)によって口の機能を維持・向上させることです。

前者は「器質的口腔ケア」、後者は「機能的口腔ケア」と呼ばれ、どちらも口の健康だけでなく、全身の健康維持につながります。

また、誤嚥性肺炎※1(ごえんせいはいえん)や心内膜炎※2が口の中の汚れ・微生物と関連している事や、噛み合わせが老化・認知症に及ぼす影響が分かって来ました。

とりわけ、誤嚥性肺炎は口腔ケアの徹底によってかなり防げる事が科学的に証明されてきました。

適切な口腔ケアを実施する事で要介護高齢者がこれらの病気にかかりにくくなります。

※1 誤嚥性肺炎 口の微生物が肺に入りこんで起こる病気
※2 心内膜炎  心臓に微生物が繁殖する病気

<参考>
要介護高齢者の口腔ケア 厚生労働省HPより
要介護者の口腔ケア 国立長寿医療センター病院HPより

口腔ケアの準備

一般的に食後に口腔ケアをするケースが多いと思います。

食事スペース(リビング)から洗面台のある所に誘導します。

自身の手洗いをしっかりとします。

入所者も手洗いをします。

口腔ケアに必要な物品(液状歯磨き、お茶、ガーグルベース、コップ等)を準備します。

入所者が安全・安楽に整容ができるような姿勢に配慮している(イスや車イスの座位姿勢に無理はないか、洗面台と座位置の適切な距離等)。

口腔ケア(自立支援)

入所者の身体機能や症状、状態に合わせて、自立支援を意識して適切な方法で口腔ケアを行います。

自力で歯磨き・うがい、義歯の洗浄等ができる入所者に対しては、声かけを行いながら自力で行ってもらい、状況を確認して必要に応じてサポートします。

うがいができない利用者については、専用物品等を用いて口腔内を清潔に拭きます。

義歯を用いている利用者については、利用者に声かけしながら義歯を外し、汚れ、破損等を確認したうえで、決められた手順で洗浄を行います。

プライバシーへの配慮

口腔ケアもプライバシーに配慮する必要があります。

口腔内に食物残渣(しょくもつざんさ:食べ物の残りカス)がたくさん残る方があります。

入れ歯を外して洗浄する方もあります。

これらは、あまり人に見せるシーンではないのでプライバシーへの配慮が必要です。

具体的には、居室の扉を閉める、カーテンを閉めるなどで、済湯目にさらされるようなことがないようにしましょう。

口腔内のチェック

口腔内に問題がないか観察します。

痛みがあるとケアを避けようとするので、痛みの原因となる口内炎・欠けた歯・歯肉の脹れ・義歯による傷などの有無をチェックします。

経験した事例の紹介

私の経験事例をひとつ紹介します。

認知症のある方でした。

居室に誘導して口腔ケアの準備をして歯ブラシをお渡ししました。

「ありがとう」と言ってにっこり笑って歯磨きを始められました。

その時に他の方のナースコールが鳴ったのでそちらに行きました。

しばらくして戻ってくると、歯磨きは終わっておられたのですが、歯ブラシで洗面台を掃除されていました。

排水口のステンレスのフィルターも外してとてもきれいにされていました。

そんな場合は叱責するとご本人には全く悪気がないのでトラブルに発展します。

「あぁ、きれいにしてくださってありがとうございます」と言って歯ブラシを預かりました。

でも、その歯ブラシはもう使えなくなってしまいました。

こちらが気づかなければ、明日もまた同じ歯ブラシを使われたことでしょう。

見守りをしていなければ意外なことが起こるという事例です。

介護職ならよく経験する話ですが、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、よくある事例を紹介しました。

まとめ

自分自身の歯磨きをするときは「気持ちよさ」や「さっぱり感」を大切にしています。

普段はあまり意識していないかもしれませんが、口腔ケアは「健康維持」と「疾病予防」に重要な役割を果たしています。

口の中の清潔が保てず炎症が進行して過敏となると、食べ物や飲み物の刺激さえ苦痛になって、十分な食事や水分さえとれなくなることもあります。

また、口腔ケアにも「尊厳の維持」、「自立支援」の要素がふんだんにあります。

介護保険の理念は介護職が共通認識として持っていますので、念頭に置いて介助しましょう。

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