入浴介助(50代、60代の転職)介護職の仕事08

介護職の仕事
旧国鉄 オレンジと緑の電車

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。


資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。


おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。

この記事では入浴介助について記します。

実際の技術面はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。

すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。

介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。

なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。

介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。

入浴の必要性

「入浴」は、清潔を保持し、代謝の向上や心身を爽快にし、安らぎを与え、意欲を高めるうえでも重要です。

高齢者にとって最後まで残る生活の楽しみは「食事」と「入浴」と言われています。

健常者と同様に要介護者にとっても、入浴は生活に必要な日常行為です。

入浴介助のリスク

入浴する際の身体状況や入浴の環境によっては、意識障害を起こし溺水する等重大な事故につながる危険性があります。

入浴中の急死・急病の原因は、心肺停止(呼吸・心臓の停止)、脳血管障害、一過性意識障害(失神)、溺水・溺死とされます。

入浴事故死はシャワー浴が主なアメリカやヨーロッパでは極めて少ないです。

入浴事故死は日本に特有の入浴形式(浴槽につかる)が入浴中急病・急死の誘因と考えられています。

入浴事故防止のための注意事項

・脱衣所や浴室をあらかじめ暖め、入浴時の温度差を少なくする。

・一般浴では浴槽は浅め(あるいは水位を低く)で半身浴が望ましく、縁に手をかけておく。

 必要に応じて転倒防止マットなどを設置する。

温度(39~41℃)で、長湯はしない。

一日の中で体温が上昇し、血圧の安定する時間帯の入浴が望ましい。

・血圧下降の原因となるような食時直後の入浴や、入浴中の急激な起立は避ける。

入浴後は水分を補給する。

強い希望があっても入所者が一人で入浴することは避ける。  

入浴介助準備

シャンプー、石鹸、洗面器等必要な物品、浴室内の室温調整、湯温の確認等を浴室内に準備する。

脱衣カゴ、着替え、排泄用具等必要な物品の用意、脱衣室内の室温調整等を脱衣所で準備する。

入浴時の事故防止を心がけた環境整備を行う。

バイタルサインの測定や利用者へのヒアリング等による体調確認、意向確認を行い、入浴や清拭の可否について確認する。

バイタルサインや医療職の指示、既往歴などに基づいて、利用者の状態や希望に応じた入浴方法を選択する。

尊厳の保持と自立支援

スクリーンやバスタオルを使いプライバシーに配慮し、健側から患側の順番で脱衣を行います。

ボタンの取り外し等、自力でできるところは自分で行うよう入所者に促します。

できるだけ陰部は自身の健側の手で洗ってもらいます。

入浴介助

入浴介助の基礎知識および洗体、洗髪、洗顔等、基本的な洗い方の知識を有し、ADLが比較的自立的な利用者・通常浴槽利用者に対して、誘導、声かけ、見守り、洗体介助、湯船への移動介助を適切に行う。

末梢から中枢の順番で洗体を行います。

一般浴で浴槽に入る時は、利用者に手すり等をつかんでもらうとともに、バランスを崩さないよう身体を支えて介助する。

簡易リフト等の入浴機器を用いて入浴する場合には、利用者の身体の位置を確認し、手が挟まれる等の事故に注意して介助する。

経験した事例の紹介

デイサービスで5~6名の利用者を3~4名のスタッフで入浴介助をしていました。

大浴場の浴槽内の利用者が突然意識喪失しました。

ふわっと身体が足先から浮き上がるように体勢が崩れ、顔が半分お湯に漬かりました。

ちょうど浴槽の見守りをしていた私は「あぶない」と声を出して浴槽内に入り、身体を抱え上げました。

スタッフが数名いたので、まず脱衣場のベッドに運びました。

うつろながら意識があり、呼吸があり、脈も確認できましたので、身体をタオルでくるみました。
一人のスタッフが看護師を呼びに行ってくれました。

看護師が来る頃には意識もしっかりしていました。

看護師がバイタルサインなどを確認しましたが、特段の異常はありませんでした。

デイサービスなので医師が居ませんから、ご家族に受診していただくよう申し送りをしました。

気づくのが遅れたら溺死されていたかもしれない事案でしたが、結局、これといった原因は特定されませんでした。

高齢者は、いつ、だれが、どこで意識喪失するかわからない面があります。

特に入浴中は血圧変動が起こり易いので意識喪失事故も多くなります。


常に緊張感を持って見守る姿勢が必要です。

まとめ

入浴は日本の生活習慣上、日常生活に欠かせないものです。

入浴できることが「尊厳の保持」に直結します。

しかしながら、非常にリスクの大きな生活習慣でもあります。

リスクに対して十分配慮をしながら適切に入浴介助を行うことで、要介護入所者の生活の質は確実に向上します。

入浴介助は入所者から「気持ちよかった」「ありがとう」と言っていただけるやりがいのある介助です。

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