認知症ケア01(50代、60代の転職)介護職の仕事10

介護職の仕事
気動車(鹿島臨海鉄道)

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。

訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。


資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。

転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。


おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。

この記事では認知症ケアのための基礎知識を記します。

実際の技術面はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。

すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。

介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。

なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。

介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。

認知症

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方の中には、認知症の方と接したことがない方もおられると思います。

症状は多岐にわたりますので、接したことがあっても実際に介護職として接すると戸惑うことになります。

そもそも認知症とはどういう状態を指すのでしょうか。

認知症とは

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。

認知症にはいくつかの種類があります。

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。

症状はもの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。

次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症です。

障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。

症状はゆっくり進行することもあれば、階段状に急速に進む場合もあります。

また、血管性認知症にアルツハイマー型認知症が合併している患者さんも多くみられます。

その他に、現実には見えないものが見える幻視や、手足が震えたり歩幅が小刻みになって転びやすくなる症状(パーキンソン症状)があらわれるレビー小体型認知症、スムーズに言葉が出てこない・言い間違いが多い、感情の抑制がきかなくなる、社会のルールを守れなくなるといった症状があらわれる前頭側頭型認知症といったものがあります。

<参考>
認知症 厚生労働省HPより

認知症の中核症状とBPSD

認知症の症状には、物忘れや判断力の低下等、脳機能の低下を直接示す症状である「中核症状」と、「中核症状」に伴って現れる精神・行動面の症状である「周辺症状」に分けられる。

「BPSD」は「周辺症状」とほぼ重なる概念である。

中核症状 →改善困難

記憶障害、見当識障害、判断の障害、実行機能の障害など、すべての患者でみられる症状です。
徐々に進行し、改善は見込めません。


薬物療法で進行を遅らせることができます。

周辺症状(BPSD) →改善可能

・行動障害(徘徊、失禁、自傷・他害)

・精神症状(幻覚、妄想、作話)


・感情障害(うつ、不安、焦燥)


・意欲の障害(意欲低下、意欲亢進)


一部の患者に、みられることがある症状です。


出現する症状やその重症度は人それぞれで大きく違います。


適切な治療により、多くは1~3ヶ月で改善可能


可能薬物投与等の精神科治療技術や、手厚い介護(マンパワー)を要します。

<参考>
認知症ケア法-認知症の理解 厚生労働省HP

周辺症状(BPSD)への対応

BPSDに対しては、適切なケアや環境調整、リハビリテーション等の非薬物療法が優先されます。

ケアの基本はその人らしさを尊重するパーソンセンタードケアを基本とし、認知症の人の視点や立場に立って理解しようと努めること(認知症の人がつじつまの合わない話をしても否定したり、叱ったりしないで耳を傾ける態度をとること)、得意なことや保たれている機能をうまく使うことが重要です。

環境調整としては、デイサービス等の介護保険サービスの利用を検討し、認知症の人が心地よく安心して暮らせるような環境(転倒防止のためにつまずきやすい場所は段差をなくして階段や廊下の照明を明るくする、室内は使い慣れた物を置き、模様替えはできるだけ避けるなど)、そして、介護する人が介護しやすい環境を作ることが必要です。

リハビリテーションとしては、ウォーキングや体操などの運動療法、リアリティ・オリエンテーション(常に問いかけを行い、場所・時間・状況・人物などの見当識を維持する)、簡単な楽器演奏などの音楽療法、過去を回想することも有効とされています。

それでもBPSDのコントロールが難しく、ご本人と介護する人の苦痛が強い場合は、抗精神病薬、抗うつ薬、漢方薬などを使用することがあります。

これらの薬剤を投与するにあたっては、高齢者では副作用が生じやすいこと、転倒や骨折、嚥下障害などにより生活能力が低下する可能性があること、誤嚥性肺炎や死亡のリスクが上昇することを考慮し、慎重に行う必要があります。

そのため、BPSDに対して薬物治療が行われる際には、専門家の指導のもとで、認知症の人ご本人の反応を注意深く観察しながら進めてください。

<参考>
認知症 厚生労働省HPより

まとめ

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、未経験で介護職を目指される場合に介護職として認知症の方と接する戸惑うことになります。

まず、中核症状は改善できない、周辺症状(BPSD)は改善の可能性がある、という点を理解してください。

実際に介護サービスを提供するうえで障害となるのは周辺症状(BPSD)です。

ご飯を食べたことを忘れても(中核症状)、「ご飯は食べましたよ」と説明して納得されれば、生活を支援することは可能です。

「ご飯は食べましたよ」と説明しても「食べていない!」と怒って暴れる(周辺症状・BPSD)などの症状があると、生活を支援することは困難です。

周辺症状(BPSD)はかかわり方次第で改善される場合があります。

先輩職員のかかわり方を見て、自分に合ったかかわり方※を体得してください。


それが認知症ケアです。

※自分に合ったかかわり方とは?

自分にも先輩職員にも個性があります。

年齢、性別、体格、声の質など、自分の個性によって、先輩職員とな事故とをしてもうまくいかないことがあります。

要介護者から見た自分を想像して、自分に合ったかかわり方を開発して体得してください。

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