50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。
この記事では認知症ケア(コミュニケーション)について記します。
実際の技術面はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。
すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。
介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。
なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。
介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
認知症の方の心理的ニーズ
認知症のかたは往々にして不安を抱えておられます。
いろいろなことが覚えられない、わからなくなる、何がわからないのかわからない、など、心の中の混乱が大きな不安を醸成します。
そんな中で認知症の方の心理的ニーズとなるのは、くつろぎ、共にあること、自分が自分であること、愛情、たずさわること、結びつきなどです。
コミュニケーション
認知症ケア=コミュニケーション、と言えます。
すぐれた介護技術を持つ人が手早くオムツを替えて清潔にしても、それだけでは認知症ケアは完結していません。
その過程で声掛け、会話があり、いたわりの気持ち、不安への共感などが伝わってこその介護であり、それが認知症ケアです。
身体介護技術と認知症ケア技術は2本柱として存在しているのかもしれません。
コミュニケーションには、大きく分けて「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」の2つがあります。
ご存知のとおり、言語的コミュニケーションは「言葉を使って相手と会話をすること」をいい、非言語的コミュニケーションは簡単にいえば、「ジェスチャーや合図などを用いて、相手に心情などを伝える」方法です。
私たちは日常的にこれらをその時々に応じて使用しています。
相手との意思疎通を図るためには、どちらのコミュニケーション手法も重要なのです。
たとえば、つらく哀しい体験のお話を聞くときに、笑顔で聞くと感情がこじれます。
そんな時は、つらい気持ちを思いやる表情で聞くと感情が穏やかになります。
経験した事例の紹介
すぐに忘れてしまい、何度も同じ話を繰り返す方がおられました。
記憶障害によって自分の話したことを忘れ、見当識障害によっては自分の置かれている状況が分からなくなることで同じ話を繰り返されます。
周囲が「さっきも話したのに」と思うようなことを何度も繰り返し話します。
「〇〇病で手術をしないと助からないと言われて、ものすごく悩んだの」と言われました。
認知症ケアのセオリーに従って初めてのフリをして傾聴しました。
共感を伝える手法としてオウム返し(認知症の方が発した言葉をそのまま返す)で「〇〇病で手術をしないと助からないと言われて、ものすごく悩まれたのですね」と返しました。
周りにいた入所者がヒソヒソ話をしています。
「また言っているわよ」、「同じ話ばかり」、「職員さんも毎回聞いてあげて大変ね」と言われていました。
「ほんと辛くてねぇ…でもこの話、さっきしましたね」とニコッと笑われました。
周りにいた入所者の方がドッと一斉に笑われました。
認知症ケアのセオリーを守って、オウム返しという手法まで使っていたのに、顔が赤くなってしまいました。
認知症の方の反応が一様でなく、変化があることも介護の仕事の魅力です。
まとめ
認知症の方とのコミュニケーションは認知症ケアそのものです。
何もわからなくても、周りのみんなが明るい笑顔で居れば、不安なく安心していられます。
周りのみんなが、不愉快な言動を繰り返している様子であれば、怒りと不安が伝染します。
人間は感情によって幸福にも不幸にもなります。
言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーションを駆使した認知症の方とのコミュニケーションを通じて、より質の高い認知症ケアが提供できます。
<参考>
認知症ケア法-認知症の理解 厚生労働省HPより
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