50代、60代の実年世代のみなさんにとって、回想法は自分も楽しめる認知症の方へのアプローチです。
ここでは、昭和中期生まれの我々ならでは楽しめる回想法をご紹介します。
回想法とは
回想法とは、昔の懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い家庭用品などを見たり、触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う一種の心理療法です。
昔の思い出は、高齢者の方が今まで歩まれてきた人生そのものであり、昔を懐かしんで話をされている時は、自然と穏やかな表情になっていらっしゃることでしょう。
語り合う相手がいれば、喜びや幸せな気持ち、大変だった経験を乗り越えてきたことも一緒に分かち合い、充実した時間を過ごすことができます。
楽しかったこと、辛かったこと、家族や友人とのエピソード、生き抜いてきた社会的背景など、人それぞれ過ごしてきた時間は異なります。
今までの自分の人生を振り返り、人生を再確認することで、現在の自分も肯定的に受け入れやすくなります。
昔の思い出に親しむことはごく自然なことであり、回想法は今の自分を認め、人生を豊かにするための手段のひとつとも言えるでしょう。
高齢者の思い出を想起させることで、介護予防効果が期待される、というものです。
参考 回想法 公益財団法人 長寿科学振興財団㏋より
回想法の活用事例
デイサービスでも施設でも、食後のひと時を利用してできることからやってみるのも楽しみになり、認知症の進行を遅らせるなどの介護予防効果もあります。
専門家の指導をけることも重要かもしれませんが、自分でできることを楽しみながらやってみることで、利用者も自分も楽しめます。
私は雑談能力が低いのですが、ちょっとしたきっかけで高齢者同士で会話がはずむので助かります。
実際にやってみた中で盛り上がった事例をご紹介します。
いろはかるたを語る会
実際に競技をするのは難しいですが「いろはかるた」の読み札を読むだけでも何らかの反応があり、話が広がります。
高齢者は「いろはかるた」の格言をよく知っておられ、プチ情報も飛び出したりします。
空き時間を利用して「いろはかるたを語る会」を企画してみてはどうでしょうか。
たとえば「犬も歩けば棒にあたる」の読み札を読んで「よく聞きますけど、これってどういう意味ですか?」と自分の質問のように投げかけると、何人かが自分の知識を披露してくださいます。
そこから昔こんなことがあった、こんなことを言う人もいた、など会話が広がります。
昭和を懐かしむ会
昔の写真などを一緒に見ながら、思い出話に花を咲かせるのも良いです。
地域の昔の様子などを伝える役所のホームページなどを見ながら、そのころ自分が何をしていたか、など自分の思い出話で水を向ければ「あの頃は大変だった」などの話が広がります。
高度成長期、安定成長期、バブル経済期などの思い出が出てきますが、我々50代、60代の実年世代も一緒に体験した時代の話なので、話の内容によっては今まで知らなかった歴史の裏側のような情報も得ることができます。
歌レクリエーション
歌詞カードを用意すれば、全員が参加できる歌レクリエーションになります。
CD、スマホ、パソコンなどで曲を流すことができれば、それに合わせて歌うほうが参加しやすくなります。
いわゆる文部省唱歌は小学校で学んだので、たとえば「春の小川」「ひなまつり」などほぼ全員の方が口ずさむことができる鉄板ネタです。
また、歌謡曲(今でいうJ-POP)にも鉄板ネタがあります。
今の時代と違って新聞・雑誌・ラジオ・テレビを通じて流行が少しずつ浸透した時代でもありました。
だから、当時のヒット曲は誰もがムラなく知っており、たとえば「およげたいやきくん」、「瀬戸の花嫁」もほぼ全員の方が口ずさむことができる鉄板ネタです。
寝たきりに近い方も少し口を動かして参加される場合があります。
口を動かすことは、ものを食べる、飲み込む機能の維持改善に効果があるとされています。
声を出して歌うことは、発声機能、呼吸機能の維持改善、一緒に歌うことは社会参加にもつながります。
季節ごと、イベントごとにも歌があるので季節を感じていただくという効果もあります。
まとめ
親世代が介護サービスの利用者であることから、50代、60代の実年世代のみなさんにとって、息をするように気軽に会話することも介護予防効果が期待できます。
気を付けたいのは、複数の方で一緒に話している際には、災害や戦争など、暗い過去を想起させるような話題はできれば避けたいと思います。
1対1の場合は傾聴させていただくのも大切かもしれませんが、集団の場では、そちらに話題が向かないように配慮する必要があると思います。
そこに気を付ければ、一緒に生きてきた時代を一緒に振り返るだけでも、回想法を取りいれた良質の介護サービスになります。
自分なりのやり方で高齢者の笑顔を引き出すことができれば、自分自身も気持ちが明るくなり、実は自分自身も救われています。
50代、60代の実年世代の方が「介護の仕事に就いてよかった」と感じていただける日が来ることに期待します。
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