認知症の理解②(50代、60代の実年世代で介護職を目指す方へ)

豆知識(雑談)
雅の盃(水族館)

50代、60代の実年世代の方が介護職に就くにあたって、これまでに認知症の方とかかわったことがない方もおられます。

また、身内の数例を知っていても認知症の多種多様な全体像を知っておかなければなりません。

ここでは認知症について、基礎知識として知っておいたほうがよい内容を記します。

認知症は一つではない、代表例(病名)として、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つを紹介します。

いずれのケースでも、医師の所見、診断に基づいたケアプランに沿って介護します。

病名、病状、ケア方針を介護職だけで判断をしてはいけないことは重要なので抑えておいてください。

(以下、参考資料より引用)

「知っておきたい認知症の基本」 政府広報オンラインHP  

「認知症を理解しよう」 愛知県/国立長寿医療研究センター

「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い(一例)

 加齢によるもの忘れ認知症によるもの忘れ
体験したこと一部を忘れる
例)朝ごはんのメニュー
すべてを忘れている
例)朝ごはんを食べたこと自体
もの忘れの自覚あるない(初期には自覚があることが少なくない)
日常生活への支障ないある
症状の進行極めて徐々にしか進行しない進行する

認知症の原因となる病気

アルツハイマー型認知症

<特徴>

脳内に本来蓄積されない異常な蛋白がたまってしまうことにより、病気が起こることがわかってきている。

症状が出る 20 年前からたまり始めることがわかってきたが、なぜ少ししかたまらない人と大量にたまる人がいるのかはわかっていない。

<具体的な例>

・1 年ほど前から前日のことを忘れることが多くなった(記憶障害)

・通帳や大切な物のしまい忘れがめだつようになり、物が⾒つからないときに夫のせいにする
 (判断⼒の低下)

・結婚した娘のところに何度も電話してくるが、前にかけてきた内容を覚えていない(記憶障害)

・買い物へは⾏くが、同じものを大量に買ってきてしまい冷蔵庫内で腐らせてしまう(遂⾏障害)

・料理もレパートリーが減り 3 日続けて同じ料理を作った(遂⾏障害)

・最近好きで通っていた絵画教室へいろいろ理由をつけては⾏かなくなった(社会性の消失)

・診察場⾯では、認知症スクリーニングテストで時間の感覚と単語を思い出す能⼒の低下。今日は何月  
 の何日ですか?という質問に対して、「えーっと何月でしたっけ。」と夫のほうを振り返って尋ね 
 る。「今日は新聞もテレビも⾒てこなかったものですから」といいわけする(取り繕い現象)

血管性認知症(脳血管性認知症)

<特徴>

脳梗塞や脳出血といった脳血管障害によって、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり認知症をきたすものをいいます。

脳血管障害を起こした場所により症状は異なりますが、まひなどの体の症状を伴うことが少なくありません。

<具体的な例>

75 歳 ⼥性 2 年前に⾼血圧を指摘され治療を開始したが、そのころから意欲がなくなりぼんやりしていることが増えた。

会話も遅くなり直前に聞いたことが思い出せない。

また歩⾏が小刻みになった。

病院を受診し 記憶の障害と空間認識の障害を指摘。

MRI では脳梗塞が多発していた。

レビー小体型認知症

<特徴>

脳にαシヌクレインというタンパク質がたまり、認知症をきたすと考えられています。

記憶障害などの認知機能障害が変動しやすいことのほか、ありありとした幻視(実際にはないものが見える)や転びやすい、歩きにくいなどのパーキンソン症状、睡眠中に夢をみて叫んだりするなどの症状を伴うことがあります。

どの症状が先に出てくるかはそれぞれです。

<具体的な例>
6年前から夜中に大声を出して、⼿足を激しく動かす(レム睡眠⾏動異常)。

4 年前の 10月頃から会話が筋道をたててできない、洋服がうまく着られない。

機械を扱う仕事をしていたにもかかわらずカメラが使えない。

目覚まし時計があわせられない(空間認識の障害)。

1日中うとうと眠っているかと思うと突然怒り出す(症状の変動性、睡眠リズムの障害)。

また動作がゆっくりになってきた。

本年1月大学病院の神経内科に⼊院。

パーキンソン病と診断されたが、抗パーキンソン病薬の効果は明らかでなく、白い服を着た⼥の人がいる、⼦供が来ているといった幻視が出現した。

前頭側頭型認知症(ピック病)

<特徴>

脳の前頭葉と側頭葉が病気の中心として進行していき、同じ行動パターンを繰り返したり、周囲の刺激に反応してしまうなどの行動の変化が目立つ「行動障害型」と言葉の障害が目立つ「言語障害型」があります。

<具体的な例>
X 年4月頃から不眠、7月ごろから無⼝になった。

本来はおしゃれで社交的な性格だったが家族とも⼝をきかなくかった(性格変化)。X+2 年6月頃から異常⾏動がみられるようになった。

1) 安全ピンを1日に何回も買いにいき、お⾦を払わずに帰ってくる。
  (常同的、保続的⾏動、社会性に対する関心の消失)

2) スーパーのビニール袋を際限なく引っ張り出す。
  (衝動的⾏動、脱抑制的⾏為、社会性に対する関心の消失)

3) 全裸で洗濯物をかわかす。
  (社会性に対する関心の消失、清潔さと整容の無視)

4) ヘアドライヤーで洗濯物を乾かし続ける。
  (道具を強迫的に使ってしまう、執着観念)

5) 他人のゴミ袋に⾃分の家のゴミをいれる。
  (社会性に対する関心の消失)

6) これらの異常⾏動を夫が非難すると反抗的になり暴⼒をふるった。
  (脱抑制的⾏為、精神⾯での柔軟性の⽋落)

7) X+2 年 10 月銀⾏から大⾦をおろしてしまい使ってしまう。
  (習慣は保たれる)

8) 部屋のなかは泥棒が荒らしたかのように散らかっている。
 夫が片づけても再び散らかす。(清潔さと整容の無視)

9) X+3 年1月初診神経学的に特記すべき所⾒なし。
 病識は全くなく、夫のいっていることはすべて嘘であるといいきる。(病識⽋如)

まとめ

私が経験した中での印象ですが、

アルツハイマーの方は、突然怒り出すこともありますが、基本的に温厚でにこやかです。

血管性認知症の方は、まだら症状で記憶もとぎれとぎれのため、ご本人も混乱して興奮しやすい。

レビー小体型認知症の方は、お風呂場に小さな子供が大勢いる、などの幻視を事実として懸命に訴えられました。

前頭側頭型認知症(ピック病)の方は、ワンパターンの行動が変わると異様に興奮されるので、ワンパターンを変えないように対応しました。

この他にも様々な症例がありますが、特異な例として栄養不足が原因で認知症の症状が出ていた方もおられましたので、医師の診断を受けていただくことが重要です。

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