50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。
施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。
この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。
大きく分けるとその対象は顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。
利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。
なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。
それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。
ここでは、スタッフの力を最大限に引き出すため、スタッフからの相談対応について触れます。
スタッフの相談対応
スタッフが安心して働ける職場づくりには、スタッフからの相談対応が欠かせません。
私がこれまでにスタッフから相談を受けた内容で休業に関するものをご紹介します。
それぞれその場で持っている知識で対応しましたが、正確なところは調べて後日回答としました。
その場で回答できなくても、相談を聴いてもらえるという安心感をスタッフに与えることが重要です。
産前産後休職制度、育児休業制度、介護休業制度、子の看護休暇、労働災害、私傷病による休職などの制度について、制度の存在を知らなければ、スタッフから不信を買います。
以下に国が定めたルールを抜粋して記載します。
会社(法人)ごとに細部が異なりますので最終的には専門部門に確認が必要ですが、相談を受けた際に少しでも知識があればスタッフの信頼感が増します。
ただ、メンタルヘルスに関する相談では、例外的に後日回答では済まない場合もありますのでご注意ください。(「私傷病による休職」の項目参照)
産休(産前産後休暇)
出産前6週間(双子などの多胎妊娠の場合は14週間)と出産後8週間が認められます。
休み中は無給ですが、一般的には出産手当金(健康保険)と出産育児一時金(健康保険)などの給付金があります。
(参考)働きながらお母さんになるあなたへ 厚生労働省HPより
育休(育児休業制度)
継続して1年以上勤務している者は子供が1歳になるまでの間に取得することができます。
一定の条件を満たした場合は、最長2歳まで育休を延長できます。
休み中は無給ですが、一般的には育児休業給付(雇用保険)の給付金があります。
(参考)働きながらお母さんになるあなたへ 厚生労働省HPより
介護休暇と介護休業
介護休暇と介護休業があります。
休み中は無給ですが、一般的には介護休業給付(雇用保険)などの給付金があります。
また、休業以外にも短時間勤務、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限などがあります。
(参考)介護休業制度 厚生労働省HPより
子の看護休暇
小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日
(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日) を限度として、子の看護休暇を取得することができます。
子の看護休暇は、1日単位又は半日単位(1日の所定労働時間の2分の1。労使協定によりこれと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日。)で取得することができます。
(参考)子の看護休暇制度 厚生労働省HPより
労働災害
50代、60代の実年世代の方は「めざせ労災ゼロ」、「労災ゼロ〇日更新中」などのスローガンを見たことがあるかもしれません。
当時は「労災になるとオオゴトだから労災にせずに…」という対応もあったかもしれません。
それらは昔の話で、今は労働災害の治療に健康保険を使用すると保険の不正使用に該当するうえ、いわゆる「労災隠し」の取り締まりが厳しくなっています。
スタッフから相談があった場合「そのくらいは健康保険で…」などと絶対に言わずに、即座に労災申請の手続きをしてください。
労災に該当するか否かは労働基準監督署の判断です。
施設側で勝手に判断しないようにしましょう。
(参考)労災保険給付の概要 厚生労働省HPより
私傷病による休職
私傷病による休職制度は、国の制度ではなく個々の会社(法人)の就業規則で定められています。
下記PDF資料のP24~25に就業規則のサンプルがありますのでご参照ください。
会社(法人)の就業規則で「休業の最長保障期間」が定められています。
期間中で復職できなかった場合は雇用契約が終了となるかもしれませんので、その点は念頭に置いて、就業規則を確認してください。
(参考)心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き 厚生労働省HP
なお、経験談ですが突然スタッフから「早退させてほしい、もう死にたい(=希死念慮:きしねんりょ)」という相談がありました。
このような場合は決して一人にしてはいけません。
生命にかかわる重大なことです。
常に誰かが付いて見守る、産業医に相談する、家族に迎えに来てもらって家族と一緒に帰宅させる、などの対応が必要です。
(参考)公益財団法人 産業医学振興財団 HP
産業医学振興財団委託研究 (zsisz.or.jp) P10参照
まとめ
これまでに私が経験したスタッフからの相談で、休職に関するものをまとめました。
会社(法人)ごとに細部が異なりますので最終的には専門部門に確認が必要ですが、相談を受けた際に少しでも知識があればスタッフの信頼感が増します。
50代、60代の実年世代の方が他業種から転職され、施設長に赴任されるとスタッフの期待と不安が交錯している状態になります。
そんなときに一人から信頼が得られれば、口コミで広がります。
スタッフが相談に来たら、信頼を獲得するチャンスととらえて確実な対応を心がけてください。
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