50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。
施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。
この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。
大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。
利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。
なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。
それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。
ここでは、顧客満足度を高める入所者からの相談対応と救急対応について触れます。
財産、相続、遺言関連
老人ホームには、自立心の強い高齢者も多く入所されています。
これからの生活、財産の分与について相談を受けることがあります。
そんな場合は中にあまり入り込まず、第三者として専門家を紹介するなどの対応をします。
老人ホームの施設長や管理職は、入居者とは入居費用の授受を通じて利害関係があります。
善意であっても深く介入しすぎると、後になって訴えを起こされるリスクを負います。
下記のような専門家を紹介してください。
今現在お世話になっている専門家が居なければ、金融機関の担当者に相談するのが良いと思います。
・金融機関の遺言信託
・弁護士、司法書士、行政書士、税理士による遺言作成。
・遺言書保管制度(法務省)
緊急(救急)対応の事前聞き取り
延命治療をするかしないかは、終末期において大きな問題となります。
施設であらかじめ延命治療をするかしないか、意思表明を書面でいただいておく場合もあります。
延命治療をするか、しないか、に踏み込む前に、施設としては、施設で緊急時が発生した時の対応を取り決めることが重要です。
私は、心肺停止で発見された場合、救急要請をするか否かを聞き取って、書面で残すようにしています。
ただ、心肺停止という状態を判断するのも医療の領域になりますので、夜勤帯で看護師が居なければ「心臓と肺が動いていないようにお見受けしますが、救急車を呼びましょうか?」という問いかけになります。
救急車を呼ぶと治療が始まり、救急救命ではそれが延命治療へとつながるケースもあります。
しかしながら、救急車を呼ばなければ、治療自体が進みません。
この一長一短をわきまえて、あらかじめ救急車を呼ぶかどうかは、ご本人や家族に聞き取りを行って書面で残すようにしましょう。
緊急(救急)の対応時の注意事項
夜間に緊急事態で救急車を要請することがあります。
必ず付き添いが要るのですが、家族が来られない場合は介護現場から行くことになります。
時々ある事例ですが、異常がないから帰ってください、と言われるケースがあります。
「苦しい」と苦しんでおられたのに救急車で病院に着くと何事もなかったかのように戻っておられ、検査の結果も異常なしとなることがあります。
病院も異常がない人を入院させることはできないので、何とかして帰らなければなりません。
タクシーに乗れる方なら良いのですが、車いすの方、リクライニング車椅子の方は乗車できる車が絞られてきます。
都市部でも夜間は介護タクシーが休業していますので、帰るすべがない場合があります。
病院に一日入院をお願いしても「そういうことなら次回からお宅の施設の救急要請は受けられなくなります」と言われたことがあります。
あらかじめ、施設の車が運転できる職員が当番制で夜間対応に備えることも必要です。
まとめ
老人ホームの顧客は言わずと知れた入居者ですが、顧客満足だけを追求できない場合が往々にしてあります。
いずれ入居者ご本人の判断能力が減退したときに、ご家族との信頼関係が必要になります。
どんな場合でも、ご家族との連絡は密にして信頼関係を維持しましょう。
また、緊急(救急)対応においては、スタッフの協力が不可欠です。
ご家族との関係、スタッフとの関係にも気を配りながら、入所者の顧客満足を高めていきましょう。
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