50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。
施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。
この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。
大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。
利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。
なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。
それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。
ここでは、顧客満足度を高める日々の生活の質向上について触れます。
人とかかわるようにしてほしい
認知症が進行するのは仕方がないのですが、人とかかわることでその進行を遅らせることができると言われています。
ご家族からも「人とかかわるようにしてほしい」という依頼を受けることがあります。
食事をする席を工夫して、話し上手な人と近い席にすることで解決できることがあります。
また、テレビや新聞から話題をピックアップして提供すると、入居者同士でお話が始まります。
入居者同士での会話が難しい場合は、スタッフが話しかけるなどで、人と交流する機会を保ちます。
入所者が人とかかわる機会を提供することは、良いケアにつながります。
入居者全体をよく見てバランスよくなるよう配慮しましょう。
寂しい思いをさせないでほしい
ほぼ寝たきりの方、ベッドから離れたくない方もおられます。
ご家族は、一日中寂しい思いをしているのではないかと心配されます。
事実、ベッド上で一日過ごしても楽しみはあまり得られないように思います。
できれば昼間の時間を利用してレクレーションに参加いただくか、見ているだけでも入居者が集うサンルームで過ごしていただくことで、賑わいを感じることができます。
そんな時はうたレクがお勧めです。
ネットがない時代の昭和の流行歌は息が長いヒットになったので、ほぼ全員の方が知っています。
歌詞カードが無くても、懐かし昭和歌謡をかけるだけで、皆さんがなんとなくの歌詞で歌い始めます。
ほぼ寝たきりの方もすこし口を動かして歌おうとされ、参加されているしぐさが見られることもあります。
うたレクなら、忙しいスタッフも曲をかけっぱなしで手軽に実施できます。
今の能力(残存応力)を活かして参加できるレクレーションを工夫してみてください。
好きなことをさせてほしい
入所者の中には、居室で趣味に打ち込みたい方もおられます。
これまでの経験で、手芸、編み物、写経などに居室で取り組まれていた方がありました。
認知症で自発的には取り組まれなケースでも、こちらで準備をして声掛けをすると、取り組まれます。
これは個人差が大きいのですが、残存能力を活かして生活に楽しみができるようにお手伝いしましょう。
できたことをほめる
要介護高齢者も動機づけが必要です。
できたことをほめるとやる気も出てきます。
靴下を履くことができた、ボタンを留めることができた、何でもいいので、できたことをほめてあげてください。
また、「助かります」など感謝の意を表すると、自分が役に立ったと思えます。
実際には靴下を履くのも介助したほうが早いのですが、ご本人が時間をかけて頑張って履いたら、感謝の言葉をかけてあげてください。
要介護高齢者の自己肯定感につながり、生活の質の向上が見込まれます。
まとめ
ここまで少し触れましたが、他業種からの転身で施設長や管理職に就く場合は、中規模以上の施設になりますので、一人一人の顧客満足を高めていくことまではとても手が回りません。
施設長は方向性持ってスタッフと接し、少しアイデアを出すという形になります。
研修会や委員会などの場でスタッフと接する際に「顧客満足」の視点を伝え、実現に向けて努力し、その過程を評価することで施設運営は良い方向に向かいます。
実際に顧客満足を作り出すのは現場のスタッフです。
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