従業員の退職防止(経営満足03)施設長の仕事11

施設長の仕事
京都の河津桜

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。

施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。

この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。

大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。

利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。

なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。

それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。

ここでは、経営満足に寄与する施策として従業員の退職防止について触れます。

燃え尽きの防止

介護、福祉の世界では「燃え尽き症候群」という形で、一生懸命やりすぎて燃え尽きてしまうことがあります。

やる気をもってハツラツと仕事をしていても、職場にいる時間が長すぎないか、タイムカードを切ったあとにまた仕事をしていないか、など、勤務時間には気配りが大切です。

ONとOFFにメリハリをつけて、勤務時間以外は仕事にかかわらないように指導しなければ、燃え尽きて離職するリスクがかなり高くなります。

ストレスの緩和

介護の仕事は人とかかわるので、知らない間に、自覚もないままにストレスをため込んでいることがあります。

自覚のないまま、体調不良や心の不調に陥るケースもよくあります。

お酒や薬には頼らず、良い食生活、笑うこと、寝ることは、どんな場合でも有効とされています。ストレスの解消法についても随時指導が必要です。

仕事に対する納得性

「なぜ、そうしなければいけないのか」を理解したうえで、仕事にあたることができるような指導をすることです。

たとえば、時間がかかっても、靴下を自分で履くこと、できたときに褒めることが本人のやる気を引き出して自立支援につながる、というような説明を省かないことです。

なぜそうするのかわからずにする仕事と、目的が明確な仕事では、やりがいに大きな差があります。

仕事に納得していなければ辞めたくなり、納得していればやりがいを感じます。

提案とりいれ、結果を評価

介護職の中には「こうしてはどうか」「これを試してみたい」というアイデアを持っている人もいます。

そういう提案を取りいれて、結果を確認して少し変更しながら試してみる。

自分のアイデアが採用されて、対象者の生活の質が向上した、という成果に結びついたときに、介護職は大いにやりがいを感じます。

言われたことだけをやっていればいい、という指導では仕事が面白くなくて心は離職に傾きがちです。

それぞれのアイデアが生かせる職場を育成しましょう。

委員会に出席(姿勢を示す)

介護施設ではさまざまな委員会があり、一般職の委員が集まって協議する場になっています。

一般職にとっては、上司やその上の上司とも話ができる大切な機会でもあります。

施設長か管理職は必ずすべての委員会に出席して、現場の意見や悩みを共有する機会にします。

出席する以上は、議題に対して適切な指標を示さなければなりません。

あらかじめ、各委員会のトレンドを把握して、委員会で情報提供できれば、他職種から転身した施設長が一目置かれる機会にもなります。

たとえば、虐待防止はどう取り組むべきか、という課題に対して、言葉づかいの乱れが虐待に発展するので、まずは正しい言葉づかいをしましょう、という指針を示す、などがあげられます。

一般職は施設長や管理職がそういうのでれば、自信をもって注意できるようになり、施設のモラルに一本筋が通るようになります。

(委員会の例)
施設運営委員会、身体拘束等適正化委員会、感染症・食中毒予防委員会、事故防止委員会、虐待防止委員会、排泄委員会、褥瘡防止委員会、給食(栄養)委員会、サービス向上委員会、行事委員会、安全衛生委員会、防災委員会

職員の懇親会

新型コロナ流行前までは定期的な懇親会(いわゆる食事会、飲み会)を開催していました。

高齢者施設でクラスターが発生するリスクは極力抑えたいので、新型コロナ流行以降は、酒類なしで施設内のイベントに切り替えるケースも増えています。

職員同士が仕事を離れて語り合える場も離職防止に重要です。

個人的相談ライン設置

これは私の事例ですが、365日24時間、いつでもいいから、困ったことや悩んでいることがあれば連絡ください、として、自身の携帯番号とメールアドレスを全スタッフに公開していました。

特に離職率の高い職場に赴任した時は、まっ先に掲示、回覧しました。


それはスタッフにとって「上が無責任だ」という不満を解消する一助となり、心の余裕にもつながります。

受ける側もストレスがかかりますが、そう頻繁にはかかってきませんでした。

まとめ

私の事例ですが、介護施設の管理職として赴任した当初は離職率がかなり高い職場もありました。

上述のような地味な作戦を積み重ねて、スタッフに目を向けて、不安や不満を少しでも解消しようと取り組んで、高かった離職率を業界標準ラインまで戻すことができました。

なかには体質の改善が必要であった施設もありますが、介護施設では内紛をおこすわけにはいきませんので、守旧派とも争わずに漢方薬のように徐々に効く手を打ち続けました。

50代、60代の実年世代の方が、他業種からの転身で介護施設の施設長に就かれる場合も、上述のような対応をしていれば離職率は安定するのではないかと思います。

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