50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。
施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。
この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。
大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。
利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。
なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。
それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。
ここでは、老人ホームの表示上の注意(不当表示)について触れます。
老人ホームの不当表示とは?
われわれ50代、60代の実年世代にとっては「誇大広告」という表現がピンとくるかもしれません。
印刷物はもちろんですが、ホームページやSNSでも誇大広告を防止するために様々な制約があり、景品表示法における表示ルールが適用されます。
違反行為が認められた場合は、消費者庁は、当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。
違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られ、課徴金の納付を命じられることがあります。(課徴金納付命令)
<参考>
有料老人ホームに関する不当な表示 消費者庁HP
※多くのサービス付き高齢者向け住宅にも適用されます
優良誤認表示
たとえば掲載する写真について「当該有料老人ホームが設置しているものではない施設又は設備」についての明瞭な記載が必要とされています。
以前にあった事例ですが、「安心をお約束します」と施設の外観写真を掲載していたのですが、近くの病院が背景に大きく映り込み、あたかも病院が運営主体であるような誤認を与える写真を使用していたケースがありました。
また、医師の診察風景の写真を掲載していたため、医師が常駐しているような誤認を与えるとして改善指導がありました。
このように写真によって実際よりも優良であるように誤認される表示は規制対象になります。
有利誤認表示
たとえば「終身にわたって入居者が居住し、又は介護サービスの提供を受けられるかのような表示」があります。
終身介護、生涯介護、終身利用などの表現はこれにあたるので注釈が必要とされています。
入所(入居)者の病状によっては急性期病院での治療を経て療養型の病院に入院し退院の見込みが立たなくなるケースがあります。
このような場合に「終身利用とは死ぬまで住み続けられる約束ではなかったのか?」というようなトラブルに発展します。
このようなケースを想定して「入居者の状態によっては、当該入居者が当該有料老人ホームにおいて終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合がある」ことを明瞭に表示する必要があります。
見る側の誤認にも気を配って表示に細心の注意を払わなければならないということでもあります。
まとめ
介護保険制度導入当初は、あきらかに優良誤認を意識した表示がいくつかありました。
異業種からの参入などで顧客の奪い合いの様相を呈していた時期もあり、過当競争が背景にあったかもしれません。
介護保険制度の理念が定着して最近は意図的な不当表示はほとんど見られなくなっているようです。
しかしながら、これらのルールを知らずに抵触してしまうと、築き上げた地域での信頼も失意してしまいます。
老人ホームの不当表示に関する予備知識は身につけておきましょう。
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