ここでは言葉づかいについて解説します。
高齢者への言葉づかいについては、実年世代の年の功が期待される場面があります。
尊敬語(敬語)、謙譲語、丁寧語を適切に使用し、同僚スタッフにアドバイスできれば、実年世代の株がぐっと上がります。
実年世代の方には釈迦に説法になるかもしれませんが、介護現場での言葉づかいは意外と混乱していますので、この記事を通してご理解ください。
なぜ言葉づかいが重要か
「尊厳を守る」というのは介護保険サービスの基本的な理念の一つです。
最近は「ホスピタリティ」という外来語で表現され「ホスピタリティが尊厳を守る」といわれます。
辞書で「ホスピタリティ」の意味を調べると「親切にもてなすこと」と訳されます。
「ホスピタリティ」が一番顕著に表れるのは言葉づかいで、要介護高齢者に指示、命令するような口調で話しかけることは「尊厳を守る」理念に反します。
尊敬語(敬語)
聞き手の相手の人物に敬意を表す言葉づかいです。
食べる:召し上がる
来る :いらっしゃる、おみえになる
見る :ご覧になる
言う :おっしゃる
聞く :お聞きになる
謙譲語
相手や目上の人に自分、自分側の人物の動作をへりくだっていう言葉。
食べる:いただく、ちょうだいする
来る :参る、伺う
見る :拝見する
言う :申す、申し上げる
聞く :拝聴する
丁寧語
話し手が聞き手に対して敬意を表すために表現の仕方を丁寧にする言葉。「です」「ます」など。
食べる:食べます
来る :来ます
見る :見ます
言う :言います
聞く :聞きます
まちがいやすい事例
「食べる」を表現する際に、ご利用者様が食べるときは「召し上がる」、自分が食べるときは「いただく、ちょうだいする」が正しい表現です。
尊敬語と謙譲語が入れ替わっている(まちがって使っている)シーンをよく見かけます。
「施設長が来る」と話すとき、ご利用者様(要介護高齢者)に対しては謙譲語で「施設長が参ります」と言い、同僚に対しては尊敬語で「施設長がいらっしゃいます」と言うのが正しい表現です。
ご利用者様(要介護高齢者)を目上の人として扱うと、施設の人物はたとえ上司や施設長であっても自分側の人物になり、へりくだりの対象になります。
同じことを伝えるにも、相手によって表現が異なるので注意しましょう。
尊敬語(敬語)、謙譲語、丁寧語の使い分け
私は、介護現場は高齢者の生活の場でもあり、通常の会話で尊敬語(敬語)を使うと堅苦しいのであまり多用せず、丁寧語を主に使用しています。
職員にもそのように指導しています。
ただし、クレームを受ける際は敬語でうかがわないと感情的なもつれが増幅します。
また、失礼のない範囲で方言を使用すると、気持ちも近づくので是としています。
私は関西人で、職場も関西圏です。
私自身が利用者様のご子息の世代になるので、そのキャラも考慮して少し近しい表現を使います。
そうですか、と言うときは「そうでっか」、軽くお礼を言うときは「おおきに」、などちょっと古めの方言を意識して使用しています。
まとめ
介護保険サービスの理念「尊厳を守る」を実践するうえで、最も形に現れるのが言葉づかいです。
たかが言葉づかいと思われるかもしれませんが、昨今は虐待の芽としても注目されています。
虐待が起こる施設は、前兆現象として言葉づかいが荒れてきます。
言葉づかいが荒れてきた段階で是正すれば、虐待の芽を摘むことにつながります。
実年世代は、同僚から聞かれることもあるので、尊敬語(敬語)、謙譲語、丁寧語の3種類あることと、まちがいやすい事例、使い分け、などの知識を持っておいてください。
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