介護の仕事は生活の支援になるので、自分の常識とご利用者様の「常識」の違いに驚くことがあります。
実年世代は長年の人生の中で自分の「常識」を持っておられます。
その自分の「常識」で対応すると気分を害されることがあり、自分の「常識」から離れて俯瞰的にみることも大切です。
アバウトな性格ときっちりした性格
わかりやすい例でいえば、ご高齢者でもアバウトな方ときっちりした方がおられます。
アバウトな方に衣類の収納場所を聞くと「そんなこと聞かなくていい」といわれます。
一方、きっちりした方は勝手に衣類を収納すると「勝手なことをしないでほしい」と叱られます。
誰にでも一律に通用するルールは無いので、個人ごとに対応が違ってきます。
介護職は「できない事をお手伝いする」仕事なので、こちらがやりやすいやり方を選んではいけません。
生活習慣による違い
個人的な例で恐縮ですが、私はお茶は濃い方が好きでおいしいと感じ、それを当たり前と思っています。
湯呑の底が見えないくらい濃いお茶が好きなのですが、このようなお茶をお出しすると人によっては「こんなお茶、飲めない」と言われてしまいます。
言われて初めて気づいたのですが、自分の癖や価値観は知らぬ間に出てしまうことがあるので、気をつけなければならないところです。
生命観(お看取りと延命治療)
最も大切なことで最も顕著に違うのは生命観です。
私はこれまでに数十名の方のお看取りに携わりました。
延命治療はご本人にとって痛みや苦痛を伴うなど、負担になるケースもありますので、医師から慎重に説明するのですが、延命治療をするかしないか、大きく意見が分かれます。
親を頼りにしていたので親に先に他界されることが受け入れできないご家族がありました。
看取りのお話をしても聞いていただけず、どうすればよいか、と繰り返し質問され、いつまでも決断されませんでした。
財産問題の決着がついていない場合は、ご家族が延命と看取りに分かれることがあります。
長女様が延命治療あり、配偶者様と次女様が延命治療無しというご意見の方がありました。
もし万一の場合、ご本人様は全額を長女様に相続させると決めておられました。
一方、配偶者様には、ご自身が全額相続して後々次女様に渡す、というアナザーストーリーがありました。
救急搬送されたときに遠方にお住まいだったご長女様が極めて敏速に動かれ、病院に代理人を派遣され、病院に延命治療の指示をされました。
お身内が兄妹2人だけの方の場合ですが「兄を見捨てるわけにいかない」といわれ、妹様が延命治療を選ばれました。
一般的には、延命治療を望まれず、自然なお看取りを選ばれるケースが増えていますが、これは個人の価値観、家族の価値観に大きく左右されるので、職員や他人が私見を挟むべきではないことを申し添えておきます。
私の場合は、意見を聞かれたら「一般的に」と前置きしたうえで「一般的に自然なお看取りを選ばれるケースが増えているようです」とお伝えします。
まとめ
気を付けていてもそういう場面には遭遇すると思いますが、「常識」はそれぞれ違うということを肝に銘じておきたいものです。
このように、ひとことで「常識」と言っても自分の「常識」は他人の「非常識」になる場合もあります。
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