50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
訪問介護以外の業態の介護職は、無資格でも就業できますが、介護の仕事に就かれる際には、あらかじめ資格取得されることをお勧めしています。
資格取得のための講習で得た知識や技術は、自身の心身のストレス軽減にもなります。
転職によって余計なストレスを抱え込まないためにも、資格取得をお勧めします。
おそらく募集している施設で、現場に即した導入研修もあろうことと思いますが、資格取得後も就業後も介護に関する勉強は継続してください。
この記事では排泄介助について記します。
実際の技術面はそれぞれの利用者によって異なりますので、50代、60代の方が介護未経験で介護職に就く場合を想定して、基本的な考え方を重点的に記載します。
すべての介護業務に共通するのが介護保険制度の理念です。
介護職が共有している理念「尊厳の維持」、「自立支援」を念頭においてください。
なお、この記事では介護施設での介護を想定しています。
介護施設にはグループホーム、有料老人ホームを含む広い意味での介護施設を指すこととします。
排泄介助とは
排泄介助は加齢によって衰えていくADL(日常生活動作)として日常生活において頻回に行われる基本ケアのひとつです。
尿意、便意があるか、自力でトイレに行けるか、下衣の上げ下げができるか、など、その方の状態によって介助方法は異なります。
排泄介助を要するようになった段階で、介護の質や量が急激に変化することや、在宅生活の継続を困難にすると言われています。
排泄にかかる自立支援のあり方が更なる重度化を防ぎ、ADL 維持の重要なポイントとなります。
排泄介助における尊厳の保持と自立支援
排泄行為は最もプライベートな行為であり、人のお世話になりたくない行為です。
排泄で人のお世話になることで「あきらめ」の境地になると老化の進行に拍車がかかります。
「できることは自分でやる」という自立支援が、尊厳の保持とプライバシーに配慮することになり、 QOL(生活の質)にも大きく影響します。
他人から見えない環境で介助する、匂いが気づかれないようにする、排泄の有無についても他の入所者には知られないようにする、など、健常者と同じレベルの配慮が必要です。
衛生面への配慮
排泄介助を通じて介助者が感染症を伝搬してしまうことがあります。
普段から感染症対策を施していなければ、大きなクラスターに発展します。
1ケア1手洗い(排泄に限らず一つのケアを終えたら必ず手洗いをする)の慣行、手指消毒、使い捨て手袋着用など、基本的なルールを必ず守りましょう。
入所者の衣服への付着などを発見したら、すぐに更衣しましょう。
排泄介助声掛け(事例)
トイレ誘導する際は耳元で「そろそろトイレに行っときましょうか」など他人に聞こえないように声掛けをします。
トイレ内で下衣の上げ下げを介助するときに、黙って下げられると尊厳が傷つき、驚きます。
「少しお手伝いしますね」などの声掛けも必要です。
トイレでもオムツでも「便が出て介助者に迷惑をかけてしまった」と思われるケースもあります。
「(便が)出てよかったですね、安心しました」など相手の気持ちに配慮した声掛けも工夫してみてください。
排泄の声掛けについては、他人に気づかれないよう、相手の心情に配慮することが重要です。
排泄介助の統一的な手順は未確立
排泄介助については、資格取得の研修で基本的な技法を教わりますが、統一的なケアの手法の確立や効果的なケアの実践に至っていないのが現状です。
また、実際の排泄介助の手順は対象者ごとに対応が異なりますので、施設で先輩職員などに教わってください。
経験した事例の紹介(気づき)
男性入所者の方で、認知症があり車いすも利用されている方ですが、排泄はトイレで自立されていました。
当日私は夜勤に入っていました。
その方は早朝から何度もトイレに行かれ落ち着かないご様子でした。
「何か変だな」という気づきがありました。
夜勤明けで帰る前に使用後のトイレを覗くと、便器にかすかに血の跡が残っていました。
気になるので居室にお伺いしてみせていただきましたところ、パット内に鮮血の血尿付着が確認されました。
すぐに看護師を呼んで確認、受診という流れになりました。
結局その方はそのまま入院となり、残念ながら数週間後に帰らぬ人となりました。
「早く気付いてもらって、適切な治療を受けて最期を迎えることができました」とご家族から感謝の言葉をいただきました。
排泄に関しても「いつもと違う」という視点で注視していれば身体の重大な異変に気付くことがあります。
まとめ
排泄行為は最もプライベートな行為です。
できる限りの自立支援が「尊厳の保持」に直結します。
衛生面への配慮や小さな気づきも大切にしなければ、大きな事態を引き起こすリスク要因もあります。
その方の生活を支えるという意識をしっかりと持ちましょう。
また、50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職に際して、排泄介助に抵抗を感じる方もあるかもしれません。
その点は下記記事も参考にしてください。
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