50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
この記事ではこれまでの施設長の経験を踏まえて「介護現場では生活密着のホスピタリティを」を記します。
ホスピタリティとは
ホスピタリティ(hospitality)とは、直訳で「(客に対する)親切なもてなし、歓待」とあります。
お客様や相手に対して心からのおもてなしや気配りをすること、とされています。
介護現場は生活の場
介護施設の介護現場は入居者の生活の場です。
見守りが必要な入居者は24時間見守られている。
そんな場面でのホスピタリティとは独特の技術が必要です。
介護保険導入当初は、ホテルや航空機など、他業界の常識をそのまま持ち込んでうまくいかなかった事例が数多くあります。
そうした経験を糧に、介護(福祉)業界独自のホスピタリティが発達してきました。
生活の場でのホスピタリティ
生活の場でのホスピタリティでは、丁寧過ぎない、崩しすぎない、ほどよい加減が求められます。
入居者がトイレに行きたくて立ち上がろうとしたときに、
「〇〇様、いかがなさいましたか?」
「ちょっとトイレに行こうと思います」
「では、お手伝いいたしますので、わたくしもご一緒させていただきます」
と丁寧に声をかけられるとちょっと委縮してしまいそうなイメージです。
それが一日に何度もあると、堅苦しい生活になりそうです。
声掛けの問題ですがこんな場合は、
「〇〇さん、どうされました?」
「ちょっとトイレに行こうと思います」
「では一緒に行きましょう」
程度でよいと思います。
生活の場の「緊張感が薄い環境」を大事にして声掛けにも工夫が必要です。
生活の場での言葉づかい
入居者の生活の場では極力緊張感をもたらすような声掛けを控えます。
逆にざっくばらんな言葉づかいのほうが周囲を和ませる効果があります。
また、方言や独特のイントネーションも個性として認め合うことが、普通の人間が集団を形成するうえで有効です。
かといって、ナァナァになると不快に感じられる方もあります。
丁寧語を基本として、くだけすぎないようにすべきです。
これらは過去の経験で習得できていればよいのですが、いま一度、言葉づかいについて見なおしてみましょう。
避けたいのはえこひいき
介護職員が人間味を表出しているほうがホスピタリティが発揮されやすくなり、入居者が安心できる環境となります。
気を付けたいのは、介護職員が人間味を表出すると好き嫌いにつながりがちです。
介護職員には優しい人、弱者の見方が多く、入居者の中でも笑顔が多い方、寝たきりに近い方は介護職の人気が高い傾向があります。
反面、入居者の中でも怒りっぽい人、横柄な人は人気が薄い傾向があります。
それぞれの入居者の個性を尊重するうえで、好き嫌いではなく是々非々で、どちらも平等に扱うことも大切です。
不公平、えこひいきなく、入居者みんなが平等に安心して生活ができる環境にしたいと思います。
まとめ
介護職員にとっての職場は、入居者にとっては生活の場です。
常勤の介護職員は1週間に40時間勤務します。
生活している入居者は1週間のすべて、168時間を過ごします。
入居者は、毎日おなじひとと顔を合わせます。
介護職員、看護職員、他の入居者もほぼ固定メンバーです。
そんな中に緊張感や堅苦しさがあると生活の質の向上が望めません。
生活の場ならではのホスピタリティを意識することをお勧めします。
生活の質が向上すれば、利用者の顧客満足度は上がり、地域の評判も良くなり、従業員の離職防止にもつながります。
他業種からの参入でも50代、60代の実年世代の人生経験や年輪を介護職員のホスピタリティの向上に活用していただければ、と望みます。
コメント