50代、60代の実年世代のみなさんにとって、回想法は自分も楽しめる認知症の方へのアプローチです。
ここでは、昭和中期生まれの我々ならでは楽しめる回想法をご紹介します。
回想法については下記もご参照ください。
回想法の活用事例
デイサービスでも施設でも、食後のひと時を利用してできることからやってみるのも楽しみになり、認知症の進行を遅らせるなどの介護予防効果もあります。
専門家の指導をけることも重要かもしれませんが、自分でできることを楽しみながらやってみることで、利用者も自分も楽しめます。
私は雑談能力が低いのですが、ちょっとしたきっかけで高齢者同士で会話がはずむので助かります。
実際にやってみた中で盛り上がった事例をご紹介します。
ともに笑う
関西では土曜日の昼に演芸番組を放映していたので、演芸にはなじみがります。
漫才やマジックショウなどの演芸映像を探して一緒に見ます。
一緒に笑うことで一体感が生まれ、社会参加につながります。
私の経験では、ダイマルラケットさん、いとしこいしさんの漫才は評判が良かったです。
ボケとツッコミのタイミングがわかりやすいので、話の内容が理解できていなくても、その場の空気感で笑っておられる方も多いようです。
やすきよさん以降の漫才はウケが悪く、テンポが速いことと、意外なボケが入るため、高齢者には理解できないのかもしれません。
また、新喜劇や落語もストーリーの理解が必要なので笑える方が減るようです。
関西の50代、60代の実年世代のみなさんはわかってくださるともいますが、そのほかには横山ホットブラザーズさん、ゼンジー北京さん、かしまし娘さんも評判が良かったです。
関東なら三球照代さん、玉川カルテットさん、牧伸二さんなど、昭和中期に活躍された方の映像であれば見られると思います。
ともに振り返る
昭和中期のニュース映像を一緒に見て、当時を振り返ります。
昭和中期の人口爆発、ニュータウン開発、工場の公害などの時事ネタのニュースでその当時と現代の違いを話し合いました。
ニュース映像の解説で「人口増加に歯止めがかからない日本はお先真っ暗」というような表現があり、現代の少子高齢化とは真逆の時代があったことも改めて感じました。
夫婦共稼ぎが始まったころは、学校から家に帰っても誰もいないので、自分でカギを開けて家に入る「かぎっ子」というキーワードを伝えるニュースもありました。
「これは現代では当たり前になっていますね」と水向けると高齢者より「いまは学童で預かってくれる制度もあるよ」と教えてくださいました。
こういう何気ない会話が認知症の進行予防に効果があると言われます。
ともに鑑賞する
なつかしい映画やドラマも一緒に鑑賞しました。
鉄板人気は「寅さん」と「水戸黄門」でした。
「あ、この人、吉永小百合さんですね」「若いわねぇ」など、見ているだけで自然と会話のネタが飛び出します。
美空ひばりさんの出演映画は、時代劇でありながら途中で歌唱シーンもあり、時代劇ファンも歌謡ファンも楽しめました。
いずれも、会話の話題となるきっかけを提供することで、忘れていたことが想起されることを目指した取り組みです。
まとめ
このように、50代、60代の実年世代のみなさんにとって、自分自身が懐かしいと思うものを探して一緒に見ることで、回想法に近い形で介護予防効果が期待できます。
気を付けたいのは、複数の方で一緒に話している際には、災害や戦争など、暗い過去を想起させるような話題はできれば避けたいと思います。
1対1の場合は傾聴させていただくのも大切かもしれませんが、集団の場では、そちらに話題が向かないように配慮する必要があると思います。
そこに気を付ければ、一緒に生きてきた時代を一緒に振り返るだけでも、回想法を取りいれた良質の介護サービスになります。
自分なりのやり方で高齢者の笑顔を引き出すことができれば、自分自身も気持ちが明るくなり、実は自分自身も救われています。
50代、60代の実年世代の方が「介護の仕事に就いてよかった」と感じていただける日が来ることに期待します。
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