50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。
施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。
この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。
大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。
利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。
なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。
それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。
ここでは、経営改善に寄与する施策として介護職の確保について触れます。
従業員の確保の重要性
65歳以上の高齢者数は、2025年には3,677万人となり、2042年には3,935万人となりピークを迎えると予測されています。
また、75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には、25%を超える見込みです。
一方、介護職員の必要数は、2023年度には約233万人、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人、確保する必要があると推計されています。
大きな方向性で見れば、高齢者は増加、介護人材は不足、という流れです。
最優先課題として位置づけする
需要(要介護高齢者の増加)に供給(介護職員の確保)が追い付かない事態になりつつあります。
稼動率が経営改善の唯一無二の指標であり、施設長や管理職が評価される最大のポイントであると別記事で触れました。
この稼働率を左右するのも介護職の確保の成否にかかっています。
施設長や管理職が、介護職の確保を最優先課題として位置づけして、他の仕事よりも優先的に対応することが、施設運営の成果に結びつきます。
新規募集の手段の多様化
別記事で応募する側の立場で触れていますが、直接応募に加えて、ハローワーク、人材紹介、人材派遣、求人媒体などを活用します。
ハローワーク以外は事業者で、大きな予算をかけて求職者、転職見込み者を確保しています。
本来はこちら(施設)がお金を払うのでお客様になるのですが、募集条件を明確にして、各事業者にこちら(施設)側からアプローチする必要もあります。
相手方は売り手市場なので、正確で最新の募集情報を提供してくれる所に話を持ってきます。
「こちらが顧客だから…」と思わずに積極的にアプローチしましょう。
スタッフの紹介制度
スタッフの紹介制度も有効です。
現在勤務しているスタッフからの紹介で、採用された場合は謝礼金なりお祝い金を支給する制度を導入しているところも増えています。
スタッフが紹介されないようであれば、職場に何らかの問題点が隠れているかもしれませんので、そちらの対策も必要になるかもしれません。
SNSなどから情報発信
介護施設が公式アカウントで情報発信しているケースも多々あります。
利用者のため、利用見込み獲得のため、地域への情報発信などの目的がありますが、最近では入職希望者の確保が主目的になっています。
こんな職場で働いてみたいなぁ、と思ってもらえるような情報を発信しています。
高齢者の穏やかで楽しい生活情報を発信していますが、じつは応募検討者へのアピールであって、従業員満足につながっている事例の情報発信をしています。
ツイッター、インスタグラムなど公式SNSで、明るく、楽しく、清潔感がある、やりがいがある職場である情報を発信しましょう。
その他の施策
・介護スタッフの離職防止への取り組み
→関連記事 有料老人ホーム施設長の仕事11(経営満足のために03)
・外国人、無資格未経験者、障害者、シニア世代、実年世代の採用と育成
・多様な働き方に対応するフレキシブルな職場づくり
まとめ
介護業界は、高齢者(利用者=顧客)は増加、介護人材(従業員)は不足、という流れで、介護施設の稼働率を左右するのも介護職の確保の成否にかかっています。
施設長や管理職が、介護職の確保を最優先課題として位置づけして、他の仕事よりも優先的に対応することが、施設運営の成果に結びつきます。
50代、60代の実年世代の方が、他業種からの転身で介護施設の施設長に就かれる場合は、これまでの経験を活かして、介護業界の慣習に無いようなチャレンジャブルな視点で人材を確保されることに期待します。
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