介護の生産性向上(経営満足10)施設長の仕事18

施設長の仕事
鉢植えの花

50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、管理職を目指される方に向けて「老人ホーム施設長(ホーム長)の仕事」をいくつかの記事に分けて解説いたします。

施設長(ホーム長)の役割は、成果を出すための組織作り、ということに集約されます。

この役割を果たすために、施設長(ホーム長)が重視すべき課題がいくつかあります。

大きく分けるとその対象は、顧客満足、従業員満足、経営満足、の3点です。

利用者を大切にする、スタッフの力を最大限引き出す、経営改善に寄与する、などの施策を繰り返すことになります。

なお、この記事では「老人ホーム」という一般的な呼称で「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」を含むものとします。

それぞれの業態に共通する事項を扱うようにいたしますが、一部の業態や役割分担によっては対象外になることもあるかもしれませんので、あらかじめご了承をお願いいたします。

ここでは、介護業務における生産性向上について触れます。

低生産性現場の歴史

介護業界の生産性向上の取り組みは他業界と比較して遅れています。

介護業界は2000年の介護保険導入から市場規模が急拡大し、急激な成長を遂げ、各事業者は懸命に市場の成長に合わせて受け入れ態勢を整えてきました。

特に配置人員の資格を必要としない人員配置基準によって、技量習得途上の人材も早めに独り立ちしてきたこともあり、介護現場では人海戦術に近い状態になっていました。

くわえて、介護という業務の特性上、人の技量に帰属する面があったことも大きく影響しています。

これらの背景があり、介護労働の効率化、ICT導入などの面でも大きく遅れを取りました。

10年弱くらい前からようやくIT化、自動化、ロボットの導入などが注目されるようになりました。

生産性向上への取り組み

介護事業所間の情報連携では、いまも紙による手渡しや、FAX等が活用されています。

記入ミスがあったら電話で修正連絡、といった状況です。

50代、60代の実年世代で他業種から転身されると、低生産性体制ができあがっていることに驚かれるかもしれません。

介護現場は気持ちで動いている面もありますので、その点には配慮いただきたく存じます。

他業種を経験されていると生産性向上への取り組みは着手しやすい課題ではないかと思います。

ICT導入促進

転身先の会社(法人)ですでに取り組まれていると思いますが、その導入支援などの業務を担当されると思われます。

業界の方向性については <参考>介護現場におけるICTの利用促進 参照ください。

ノーリフティングケア(持ち上げない介護)

ここではノーリフトケアのさわり部分のみ紹介します。

ノーリフトケアは文字通り力ずくで「持ち上げない」介護です。

介護職には腰痛がつきもので、介護のプロは腰痛持ち、という共通認識のようなものがあります。

生産性向上の観点から、労災防止の観点から、従業員満足の観点から、腰痛予防は必須です。

介護ロボットと呼ばれる中には、ベッドから吊り下げて車いすなどに移乗する電動リフト、椅子など座っている姿勢から立ち上がりをサポートするスタンディングマシーンなどがあります。

また、電動でなくても摩擦抵抗を軽減する機材もあります。

ベッドからストレッチャーに移るスライディングシート、ベッドから車いすに移乗するスライディングボードなどがあります。

使い方は動画で説明してくれているサイトも多くあるので、現場経験が無くても従業員の方に利用するように指導が可能です。

整理整頓

日々使用するものは置き場所を決めて、毎回探すような無駄な時間を減らしましょう。

これだけのことでも交代制勤務のスタッフに申し送りで対応するとなると、根気よく伝え続けなければ定着しません。

過去の資料がぐちゃぐちゃに整理されないまま倉庫に放り込まれているケースもあります。

日々の業務は多忙を極めますが、少しずつでも整理整頓を進めていかれることをお勧めします。


過去5年間の介護記録は保管義務があります。

加算を計上した証左(証拠)となる記録がなければ、やっていないのに加算を請求したことになります。

あとでまとめて返戻(返還)するとなると労力もキャッシュフローも大きな無駄な力を使います。

まとめ

このように、介護業界では生産性の向上に向けた取り組みが遅れぎみですが、50代、60代の実年世代で他業種から転身されると、このような「カイゼン」に着手されることに期待されます。

ポイントを掴めば特に困難なことは無いのですが、スタッフに腹落ちさせて(納得させて)みんなを巻き込んで推進することが重要です。


いわゆる「カイゼン」を常に意識して進めることで、他業種からの参入組が存在感をアピールできる分野になります。

<参考>
介護分野における生産性向上について 厚生労働省HPより

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