50代、60代の実年世代で定年退職や早期退職などで介護業界に転職し、介護職を目指される方に向けて介護の仕事を紹介します。
この記事では有料老人ホームの施設長での経験を踏まえて「葬儀、火葬、埋葬などの手間と費用が不要の献体(施設長で体験)」について施設長の目線で触れます。
体験の背景
混合型(健常者と要介護者が入居)の有料老人ホームで施設長をしていました。
2000年代の話なので混合型の事例がなく、ネット上にも情報が少ない状況でした。
要介護の方と健常の方が一緒に暮らすというモデルで運営していました。
今となってはそれがかなり困難を伴うことはわかってきましたが、当時は措置制度から契約制度に移行した直後であり新しいモデルとして各施設がしのぎを削っていました。
現代とは事情が異なる点があるかもれませんが、あらかじめご了承ください。
混合型有料老人ホームの特徴
健常者と要介護者がどちらも入居できることから、健常のうちに終の棲家(ついのすみか)として選択されるケースがあります。
「子供が居ないから」、「子供の世話になりたくないから」、「親族が疎遠」など、様々な事情もありますが、「天涯孤独のおひとりさま」も一定人数いらっしゃいました。
様々なケースの相談を体験
子供は居るが世話になりたくないから自分ですべてケリをつけたい、というケース。
子供が居なくて、何も頼めない法定相続人が居るケース。
法定相続人が存在するが音信不通のケース。
法定相続人が存在しないケース。
さまざまな相談を受けてきました。
遠縁でも相続人が居る場合と居ない場合で異なります。
複雑なケースは専門家にご相談ください。
<相談先(例)>
法テラス
参考:相続人の範囲と法定相続分 国税庁HP
献体とは
献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいいます。
「自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい」とこころざした人が、生前から献体したい大学またはこれに関連した団体に名前を登録しておき(「献体登録をするには」参照)、亡くなられた時、遺族あるいは関係者がその遺志にしたがって遺体を大学に提供することによって、はじめて献体が実行されることになります。
参考:公益財団法人 日本篤志献体協会HPより
献体を申し込まれた方
私が施設長を担当していた施設では、過去に4名の方が献体を申し込んでおられました。
私の知る事例をご紹介します。
ご夫婦のケース
ご夫婦で要介護認定を受けずに混合型の有料老人ホームに入居されていました。
お子さまがおられないのでご夫婦でこのままどちらかが亡くなって一人になっても、介護が必要になっても、当老人ホームで生活される予定の方でした。
ご夫婦ともに全く別の地域出身で、当老人ホームのある地域とは縁もゆかりもない方でした。
これまでも転勤があってもお二人で初めての土地で暮らしてきたので、別に初めての土地で過ごすことに違和感がない方でした。
その土地柄を気に入って、慎重に選んで入所された方でした。
ある日「ちょっと耳に入れておきたいことがある」と言われたので居室に訪問しました。
「僕たち夫婦は〇〇大学に献体を申し込んでいる」という話を切り出されました。
献体を申し込んでおられる理由は、
・講演を聞きに行って賛同した
・自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい、と考えた
・夫婦でだけ子供が居ないから、死後に祀ることもない
・夫婦とも実家とは疎遠だから、自分たちの自由で判断できる
・葬儀は省略する
・遺体の火葬も大学で手配してくれる
・大学で合祀してもらうので遺骨は返却不要としている
このようなことを合理的に判断して献体を申し込んだ、自分たちが亡くなったら葬儀はしないので、すぐに〇〇大学に連絡してほしい、とのことでした。
おひとりさまのケース
下記の別記事で紹介した方ですが、上述のご夫婦とは全く別ルートで別の医科大学に献体を申し込まれていました。
この方は宗教の改宗をきっかけに実家と疎遠になり、これまでにさまざまなことがあった複雑な背景を経て、いまおひとりになられた方でした。
献体を申し込んでおられる理由は、
・自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい、と考えた
・葬儀は省略する(葬儀に来るような身内はいない)
・遺体の火葬も大学で手配してくれる
・大学で合祀してもらうので遺骨は返却不要としている
・遺骨に魂はないので、特にお墓に埋葬してほしいとは思っていない
亡くなったあとのことを気にしなくていいように、献体を申し込んだ、自分が亡くなったら葬儀はしないので、すぐに△△医大に連絡してほしい、とのことでした。
まとめ
葬儀、遺骨の埋葬などの手間と費用が省け、「自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい」という社会に貢献する心に押されて献体を申し込まれる方が増えていると聞いています。
このようなケースの方には献体は大きなメリットとなります。
現実問題として献体は、身寄りのない高齢者の終活の選択肢になっている面は否めないと思います。
医学・歯学会と高齢者がWIN-WINの関係で、医学・歯学の発展につながることを祈念します。
高齢者は本当に千差万別でそれぞれの人生があり、終活に向けて何らかの課題を抱えておられます。
その課題を解決して、安心して過ごしていただくことも施設長の役割です。
他業種からの参入でも50代、60代の実年世代の人生経験や年輪が役立つ場面です。
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